Chapter 5: 公爵
その場にいた全員がそれぞれ違う表情で私の方を見た。トトは笑顔で、圭は混乱した顔で、母は驚き、父は睨んだ。
「風紀様が、ですか?それはそれは…。」
トトが感動と感謝と尊敬を一緒くたににしたような顔で私を見る。もちろんそれを黙って見ているほど私の両親は静かじゃない。
「トト、冗談だろう。風紀はまだ13歳なんだぞ。13歳の女の子が公爵になるなど、前代未聞だ!どれだけの重荷と危険を伴うか、貴様にわからないはずがない。自分のまだ13歳の娘を公爵にさせるほど私は初心(うぶ)ではない。全力で阻止するぞ。」
私の父は威厳たっぷりにトトを脅した。
「申し訳ございません、信三様。しかし女王陛下は必ず誰かを公爵に就かせよとご命令なのでございます。そう簡単に引き下がるわけにはいかないのです。」
極めて丁寧に、でもしっかりと自分の意見を主張するトトに、埒が明かないと思った私は父を説得することにした。
「パパ。大丈夫だよ?私だってバカじゃないもん。公爵がどれだけのものか、知ってるしそれを引き受ける覚悟も出来てるつもり。これでもティーンエイジャーなんだよ?それに圭よりはできると思うし…。」
私が必死に説得に走ると今度は母が怒り出した。
「何言ってんの?あんたにわかるわけないでしょ?どれだけ大変かわかってるの?あなたバカにするのもいい加減にしなさい。大人にも務まるのが難しい仕事に、子供のあんたに務まるはずないでしょ?あんたの覚悟なんて大したことないんだから。」
きっとわざと言っているんだろうけど、やっぱりグサグサと心に刺さる。こういうことを言われると、無性にやりたくなるのが私の性格なのだ。
「そんなのやってみないとわかんないじゃん!」
ついついムキになってしまうと、トトが割って入った。
「ではこういたしましょう。風紀お嬢様には2週間の体験をしていただきます。それで大丈夫そうなのであれば、引き受けて頂くということでいかがでしょうか?」
トトが提案をすると、母はキッとトトを睨んだ。
「そんなの許すわけなっ…。」
母が言い終わる前に私は勝利の言葉を口にした。
「それでいこう!」
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