面白い小説がスラスラ書けるようになる方法

悠戯

面白い小説がスラスラ書けるようになる方法

『面白い小説がスラスラ書けるようになる方法』

 こんなムシの良いタイトルに釣られてしまった皆様、こんにちは。


 こんなタイトルが気になってしまった諸兄は、きっと『小説家になろう』や他サイト等で既に作品を発表している、あるいはこれから執筆してみようとお考えなのでしょう。


 恐らく貴方は、このエッセイ以前にも色々なWEBサイトや書籍を読んで、表題と同様の効果を求めた事が既に何回もあるのでしょう。怪しい効果を謳う健康グッズや怪しい宗教にハマる素養がありそうなので注意してください。そんな都合の良いモノがあればむしろ私が教えて欲しいくらいです。というか本当にそんな魔法のような方法を知っていれば誰にも教えずに独占してます。


 とはいえ、これで話が終わってしまっては何にもなりません。

 『面白い(かもしれない)小説がスラスラ書けるようになる(かもしれない)方法』という、微妙に効果が劣る話であれば心当たりがなくもないので、今回はそれについて語らせていただこうかと思います。


 簡単に効果を発揮する魔法のような都合の良い方法ではなく、継続的な努力を要する方法、しかも特に目新しい方法というわけでもありません。どこかで同様の内容を目にした事があるかもしれません。

 なので「それでも良い」という方だけこの先にお進み下さい。








《執筆への心理的なハードルを下げて習慣化する》


 小説に限りませんが、何かを新しく始めようとする時には大きなエネルギーを必要とするものです。


 例えば、毎日ジョギングをしている人ならば走ることに抵抗感を覚えない、あるいは走ることが楽しいとすら感じるでしょう。

 ですが、これから新しくジョギングを習慣に取り入れようとしている人にとって、すでに習慣化できている人に比べて、ただ走ることへの抵抗感がとても高い壁となって目の前にそびえ立ってしまうのです。張り切って新品のシューズやウェアを買い揃えたはいいものの、三日坊主となってしまうなんていうのはよく聞く話ですね。


 これはジョギング以外でも英会話や資格の勉強、そして小説に執筆においてもよくある話で、要は行動の習慣化に失敗してしまったというわけです。


 人間が何か新しい行動を習慣として取り入れる為には、約三週間~三ヶ月前後もの間継続する必要があるそうです。その期間に関しては諸説ありますが、これだけの期間続ける事ができた行動は新しい習慣として脳に認識され、行動を起こす為のハードルがぐっと下がるのです。


 読者の方の中には

 「これから毎日必ず〇〇ページ書こう!」

 なんて事を決意した事のある方がいるかもしれません。ページ数ではなく文字数や時間が基準だったりするかもしれませんが、何かを創作しようという人の中では、そういう事を考えたことのない方のほうが少数派でしょう。


 その決意はちゃんと挫折せずに継続していますか?


 その習慣化にあっさり成功した方はラッキーです。あとは毎日食事や入浴と同じような気軽な感覚で続けていれば勝手に文章力が付いて執筆速度も速くなっていくことでしょう。


 一方、習慣化に成功せず、たまに気分が乗った時にだけ書くなんていう人もいるのではないでしょうか。こういう人の場合は毎回書き始めるたびに心理的なハードルを超えなければなりません。文章力や執筆速度というのは、基本的には量を書くことで鍛えられるものですから、習慣化出来なかった人はそれだけ不利な状況に置かれているのです。



 と、ここまでが前置きでしたが、そろそろ習慣化しやすくする為の方法について書きましょう。


 毎日執筆を続ける為には心理的なハードルを少しでも下げる必要があります。

 いきなり「傑作を書こう!」だなんて意気込んでいてはプレッシャーがかかるだけでかえって筆が進まず、結局いつまで経っても何も書けないものです。


 むしろ内容に関しては「なんでもいいから何か書こう」くらいの適当な感じでいいと思います。まずは文字を書く事への抵抗感を減らす事から始めます。面白いか否かもこの際気にせず行きましょう。


 小説のネタが浮かばなかったら、いっそ現在書いている話とはまったく別のジャンルに目を向けてみるのも手かもしれませんね。それまで書こうという発想すらなかったジャンルでも意外と書けるかもしれませんよ。あと異世界ファンタジーが主流の『小説家になろう』では他のジャンルでは意外と簡単にランキング入りできるので狙い目です。


 それでも書く内容が思いつかなければ、いっその事その日のご飯のオカズが美味しかったかとかそんな内容でも何も書かないよりはずっとマシです。お気に入りのなろう小説に片っ端から感想やレビューを入れていくとかでもいいかもしれません。


 そうやって、まずは気負わずに続けることから始めましょう。続けていれば一日に書ける量も段々と増えていきます。ジョギングで走れる距離が伸びるようなものですね。むしろ天気に左右される運動よりも有利な条件かもしれません。


 普段は無理をせずに一度に書ける文章の量を増やしていきましょう。速筆で有名なプロの作家さんの中には毎日二万文字ペースで書いている方もいるそうです。書籍になる小説一冊がおよそ十万字強ですから五日で一冊書ける計算ですよ、凄まじいですね(実際には没になる分も少なからずあるでしょうし、修正や校閲が入るのでそのペースでの刊行は不可能ですが)。


 私もその話を知って一日二万字に挑戦した事はありますが、アレは言うなればフルマラソンのようなものですね。どうにか一回だけ完走できても、じゃあ明日からも毎日やろうという風には思えませんでした。私の一日あたりの文字の許容値がまだまだ低いためでしょう。


 そもそも執筆速度というのはそれ自体を誰かと競うような種類の数字ではありませんし、自分のペースを把握して毎日少しずつ許容値を増やしていくのが一番だと思います。


 そうやって量を書けば経験が溜まって、自然と面白い作品を書ける可能性も上がってくるでしょう。







《執筆の事を考えない時間を作る》


 休む時は執筆を忘れてしっかり休みましょう。


 二十四時間、寝ても覚めても作品の事を考え続けるようなストイックな生活は、一見すると求道者か何かのようで格好良さそうに見えますが、実際はそこまで効率が良いわけでもないのです。中にはそういう生き方が苦にならないという人もいるかもしれませんが、普通の人は同じ事だけやっていると疲労や苦痛を感じます。


 疲労が溜まると人間の思考は鈍化してネガティブな方向へと向かいやすくなります。オンとオフのメリハリを付けて、休んだり遊んだりする時には執筆中の作品の事を完全に忘れるくらいが結果的には良い結果になるのではないでしょうか。



 それとこれは経験則の要素が大きいので他の方にも効果があるかは保障できないのですが、一日のうちで何度か何もせずにボーっとする時間を作ると、ネタが湧きやすいような気がします。


 スマホやPCなどが普及しきった現代では、常に何かしらの暇潰し用の道具が手元にあるような状況が多いかと思いますが、あえて何も見ず、何も聞かず、何も考えず、ただボーっとしてみてください。ソースが随分前に見たネットの記事なので信憑性はやや怪しいのですが、そうやってボーっとしている状況では人間の脳は普通に思考している時の何十倍もの速さで無意識下で情報処理をしているのだそうです。


 無意識が勝手にネタを考えてくれる、とまでは行かずとも少なくともリラックス効果はありますし、なにしろ何もしないだけなのでこれ以上ないほど簡単に実行できます。しかも無料です。騙されたとでも思って試しにやってみてください。







《最後に》


 『面白い(かもしれない)小説がスラスラ書けるようになる(かもしれない)方法』に最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 結局のところ真っ当に努力を重ねるしかないという身も蓋もない結論なのですが、その為の一助となれれば幸いです。

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