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 事件解決から3日後、中取から連絡があった。事件の全体は大体吟嬢の説明通りだったようだ。久保田のDNA判定も終わり勝山との関係は立証され、後は裁判を待つだけだそうだ。

 その事を吟嬢に伝えると

「あぁ、そう」と、一言だけ言っただけだった。まだ引きずっているのだろうか。

 その時事務所の電話が鳴った。

「はい、こちらジョニーウォーカーです。………!はい!ご無沙汰しています!……はい。居ります。少々お待ち下さい」珍しい人からの電話だ。

「吟嬢電話です」

「出たくない。居ないって言って」

「駄目です。出て下さい」

吟嬢はこちらを睨みながら電話にでる。

「もしもし」

「おー吟か。今回は難儀だったな」

「……お父様!どうして…」

「依頼したのは私だからな。解決のお礼も兼ねてね」

「そんな改まらなくてもいいのに」

「ふふっ、それは電話をする建前でな。お前の事だ。落ち込んでいるだろうと思ってね」

「………」

「探偵業なんて物は難儀な稼業だな。真実を暴いてもそれが周囲の幸せに繋がるとは限らん。そしてその所為で自分の古傷まで抉ってしまう事もある」

「……わかってます」

「本当かな?吟、お前のやっている仕事は、少なからず誰かを傷付けていると認識しているかな?そして、故意か故意じゃないは別にして、誰かを傷付けていい人は、自分も傷付く覚悟がある人だけだ」

「わかってます!」

「釈迦に説法だったかな。わかっているならいいんだ。

 吟、お前は神様でも何でもないんだ。周り全部を救える訳はない。勿論自分も含めてね。やりきれない時もある、憤る時もあるだろう。そんな時こそ落ち着いて周りを見なさい。頼るべき人、頼るべき物がある筈だよ。

 そして、それでもやり切れない時こそ酒でも飲んで忘れるべきではないかな?酩探酊さん」

「……はい。わかりました」

「まっ、そう言う事だ。身体に気を付けて頑張りなさい。陰ながら応援してるよ」

「……お父様、ありがとう」

「うん。じゃ、またね」


 電話を切った後暫く吟嬢は黙ったままだった。窓の外を見たまま動かない。

「……そーね。何もかも上手く行かないのが世の常よね。良し!山崎君!たまっている仕事片付けちゃうわよ!」

「おっ、どうしたんですか急に?お父様と話をして元気が出たみたいですね。何かアドバイスでも貰ったんですか?」

「まーそんな所。真っ当な大人の息抜きの仕方よ!美味しいお酒を飲む為には、いい仕事をしないといけないってね」

「……よくわかりませんが、了解しました。このファイルの中に全部まとめてあるので見て下さい」

「えー!こんなに溜まってるの!?この量は1日2日で何とかなるわけ……………」

「ずっとサボっていた人は………」

「なによ!貴方に………」

「失礼ですか………」

「煩いうる……」

「毎回……」

「……」

 

 こうしてまた賑やかな毎日へと戻って行った。煩くも騒々しい日々だ。

 しかしこんな煩い毎日でも愛おしくも思える。何時まで続くか分からない。明日には終わるかも分からない。だからこそこんなにも愛おしく思うのだろう。

 だから自分は今暫くこの喧騒が続くよう彼女に仕えようと思う。

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酩探酊 吟嬢 〜酔う 様 YOU〜 たて こりき @kotarinkyo

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