お人形さんみたいな子だね
また、手をつないで一緒に朝とは違いだいぶ騒がしく、人もそれなりにいる市に行って、適当に布を買ったり、調味料を買ったりしながらクゥの髪留めを売ってる店を探したりしていた。
「ヒヒノは金髪?」
唐突にそう聞かれて肩ぐらいの髪にを思い出して金髪にしてはくすんでいる髪だったななんて思う。
「金髪かもしれないけどあんまり明るい金髪じゃないかな。クゥは目も髪も明るい茶色だね」
「うん」
そういって「あ、あそこは?」と糸売りをさす。髪をまとめるのは糸というか紐が基本だ。別に問題ないだろうと糸売りに向かい、ついでに縫うための糸も買わないとなと向かう。
「いらっしゃい。その布を見ると縫い物用ね」
「あぁ。縫い物用と、髪留めにできるようなやつはあるか?」
「髪留め……あぁその子にか。あるわよ」
私の髪の長さでは必要ではないのを疑問に思ったんだろうか間が開いてその後にクゥを見て納得する。そして私を見て「あんたも大変ね」何て言ってくる。紙の長さか、私とクゥうの年齢か、姉妹にしては離れてるし、親子ならギリギリあり得る所を見てかは分からないがそういわれ「ちょっと色々あったので」なんて言った。
糸売りの視線を無視して縫い物用の糸を物色する。あまり高い値段のもなく、これならいけるななんて考えた後「パトロンになろうと思ってさ」という言葉が頭をよぎり少し顔を歪めた。さっさとこの街から出てけばよかったと思ったがそれをするのが大変なことぐらい知ってるし、そんなことできないのにと自分に向かって文句を言う。
面倒くさいやつのことは考えない様にしようと思い「決まった?」なんて髪留め用の紐を物色してるクゥに聞いた。すると、少し暗めの赤い紐と同じく暗めの青い紐を持っていた。
値段を見ると赤のほうが少し安く、ちょっとしか変わらないし別にどっちでもいいか何て考えてどっちを選ぶのか待つ。すると、赤いほうを見せてきて「こっち」と言った。
「じゃあ、これとこれ会計お願い」
そういって紐と糸を渡す。そして「はい、1082オイトね」といわれ素直に出す。
「じゃあ、またよしなに」
そういってるのを背にまた手をつないで歩き出した。その途中でクゥが「ねぇ」と声をかけてきたので「なに」と聞き返すと「パトロンって何」と今更聞いてきて言うべきかと考える。
「……パトロンは簡単に言えばお店とか、芸術家の資金援助をしてくれる人のことで、私は元々服を作って生計を立てようと思ってたの。それで、多分それなりの力はあるんだけど仕事が来ないし、店を開くだけのお金もなくて結局諦めたの。それが、何年も前。で、あの男が今更そのパトロンになってやろうかって」
あいつは、前から時々依頼を持ってくるが、腐れ縁のよしみみたいな物だろう。昔はかわいかったのに。私に向かって刺々しい言葉なんて投げかけず、私も同様に刺々しい言葉なんて投げかけなかった。
正直今でも酔った時は子供の時の片鱗がある。ほとんどヒーちゃん呼びというはずかしい事をしやがる。そこまで考えて気持ち悪くなり止め、クゥがちょいちょいと手を引っ張ってきたのでそちらを見る。
「……じゃあパトロンになってもらうの?」
そう聞かれて言葉に詰まる。お金が欲しいので一度クゥのためと称して試作品を作るつもりだが、あいつがパトロンになる事態だけはさけたい。
「……あの男じゃなかったらパトロンになってもらう事もあったかもしれない」
周りの足音だとか喋り声にかき消されてしまうようなあまり大きくない声で言うとクゥが見上げてきてどうしてとでも言うような表情になる。
「ダメなの?」
「うん。あと、私がいないときにあの男が着ても出ないでね。あの男じゃなくても出ちゃダメ」
そういって手を強く握ると「うん」と返事をして、クゥも握り返してくれた。少し経つと家と言うなの借家に着きクゥに開けてもらう。
台所を「クゥが使いやすいようにしな」といって調味料類を渡す。すると嬉しそうに詰めていくのを見て何で嬉しいのか分からなかったが、私にとってのあの部屋と同じような物なんだろうと勝手に納得させる。
「紐置いとくね」
そう声をかけて赤い紐を机において自分は適当に仕事の紙を見てどうしようかなんて考えた。一番下の紙に契約書がありそこに前金やら、報酬の金額設定とパトロンについてはディータに何てふざけた一文がありどうしようかなんて考える。
考えた所でどうせ答えは決まってるのにと思い一先ず作り始める。もし、この仕事受けることになったらあそこの従業員全員の服を作るのかと考えたりするのは止めないと。
クゥの大きさで作るならはかる必要があるけど今は楽しそうだし邪魔したくないななんて考えた後あのワンピースが頭に浮かんだ。長袖だったし、あのワンピースを大まかにはかったらいいかなんて考えてワンピースをとりにいく。
そういえば下着も足りないだろうし作ろうかなんて考えてそれもはからないと行けないのだろうかと思い少しげんなりする。クゥに紐を渡して一周した所で切ってほしいとたんで渡せばいいと気づいたときにはワンピースでの採寸が終わり、一先ずシャツから作っていこうかなんて思う。
クゥの大きさで型紙を新しく作らないといけないなと思い趣味部屋から持ってくる。それとはさみやら針やらを持ってくる。その行動に気がついて少し驚く。普通に趣味部屋でやったらいいことなのにわざわざあそこでやるのだ。
理由を考えても思いつかず、そんなことより夕方まであんまり時間がないし早く作業に取りかからないと何て思って型紙を作り始める。
スカートは楽なのにななんて思いながら型紙を作っていく。紙はそれなりに値段が下がってはいるが、自分はまだ高い。だがもったいないとはいえないし、代理の物が思いつかないのだから仕方がない。
そんなことを考えて一気にお金を使ってることを思い出し少し落ち込みながら型紙を作っていくとクゥうが向かいの椅子に座る。ご飯の準備はまだしなくていいだろうし、休んでるんだろうななんて思いながら作業していく。
ふと、髪型はどうなっているのだろう何て考えて、ちらりと視線を向けた。すると、クゥがこちらの手元をじっと見ていて少し驚く。そして、そこから髪型を見ると赤い紐を二つにしていわゆるお下げと呼ばれる髪型になっていた。
私としては後ろで一つくくりにすると思っていたのでそこにも少し驚いた後、視線に気づいた後だと少し作業がしづらいななんて思い、どうにかこの視線を別の所に向けれないかなんて考える。
縫い物をしてたら気にならないのに案て考えて、それだなんて心の中の自分に向かっていう。
一旦立ち上がり趣味部屋から適当な糸と適当な歯切れ布なんかをとってくる。そして、針に糸を通してクゥに見せる。
「……うちに遊び道具なんてのは無いけど、こういうのならばかみたいにあるから」 そして「針仕事は嫁入りに必須だし練習してみる?」というと間髪入れずに「やるやる!」と言ってきて少しほっとする。
「ならまず、まっすぐに縫おうか」
そういって簡単にまっすぐ、一番簡単な縫い方をして端まで縫い糸をくくり止める。そして、糸をまたくくりクゥに糸と布を渡す。
「綺麗に見せるには間隔をそろえたり、できるだけまっすぐ縫う。まず、おおざっぱにでいいから端まで縫ってみて」
「うん」
そして、さっき見たのをまねて裏表と針を動かす姿を見て自分も作業するかなんて思い、また手を動かす。
その後、何度かクゥに縫い物を教えたりして、クゥがそろそろご飯を作り始めると言ったのでそれに対して返事しさっきよりできるだけはやく手を動かす様にする。朝の料理の量から考えるに机を占領する勢いだから、できるだけ終わらせておきたい。趣味部屋でやっておけばいい話だが、そんなことを考えて手を止めたくない。
一心不乱に型紙を作っていく。クゥの大きさだからまだ楽で嬉しいななんて思いながら。
そんなことをしている間に料理は出来上がったらしく、どのくらいやっていたかは分からないが、あまり時間はかかってないと思う。布やら、型紙やらを片付けていき、机に空きを開けていく。
朝の時とはまた違い、量も多い。食べれるかな、なんて思った後食べれなかったら夜食に残しとこなんて思う。あいかわあず、私は食前の挨拶何てものはせずに、食べ始めクゥは食前の挨拶をしてから食べ始める。
朝入っていた野菜が大半で、でも味付けが違って驚く。あんまりおかねかけてないけど結構違うんだなんて思い、クゥに料理を任せてよかったなんて思う。私なら塩のみぐらいしか味付けの種類がないだろう。
そんな味気ない食事はもういやだな何て考えて、いつか、私が作れる料理をクゥが知らなかったら教えようかなんて考える。自分ではあんまり美味しく作れなくて、でも好物だったから作り方を教え手練流したら上手に作ってくれるだろうと考えいるうちにクゥの食前の挨拶が終わったみたいで食べ始める。
また、自分をちらちらと見てくる。別に美味しくない訳じゃないが、それを毎回ねだるのか何て思いながらまた「おいしいよ」と言った。若干面倒が事実だ。別にへるもんじゃないしと思うが、食事時間とクゥの満足感が増えるな何て本当にくだらないことを考えてクゥを見る。
朝と同じでふにゃりとつぶれたような顔を浮かべているのは少し安心し、同時に少しの罪悪感が私に襲ってくる。本心から言ってない訳じゃないがでも面倒くさいと思った事がばれたらどうなるのだろうなんて考えてしまう。
どうにもならないことは分かっている。でも考えるのだ。自分で何を考えているのかよくわからないが、どうしようもなく恐ろしく感じる。
そんな、事を考えていると表情までおかしくなっていたのかクゥが不安そうな顔に成っているのを見て大丈夫だなんて自分にいい聞かす。
「何でもないよ。少し考え事してただけだから」
そういって私もできるだけクゥをまねしてふにゃりと、つぶれたような笑顔を浮かべた。するとクゥも同じ顔になる。こんなこの何が恐ろしいんだろうか。そんな当たり前のことを思いながらご飯を少し早めのペースで食べた。
そして、少し緩い服からシャツに着替えて、緑の上着を羽織って「じゃあ、絶対帰るの遅くなるから先に寝といてね」とクゥに声をかけていつものブーツを履いて自分は出発する。外は暗い訳じゃないが明るいかと問われれば人によっちゃ暗いというような感じだ。
私としてはもっと暗い時間帯をしているのであまり暗いと感じれず、いつもの、歩き慣れた道を歩いていく。昨日のことなんだよなと思い出し「人生どんなこと起こるか分からないし、たいてい何とかなるのが面白い」なんて言ってた前店長の言葉も同時に思い出す。
いきなり、仕事中に言われた言葉だが何となく印象に残っている。そんなことを加賀えてる間に小汚い店に着く。
仕事を変えればよかったななんてまた思って、裏口に回り店に入る。店長はもういたので「今晩は」と一声かける。すると同じ様に「今晩は」といってきた。エプロンを身に着けて、清掃していく。
机の上から拭き掃除していくが寂れてる癖して店はいっちょまえに大きいよななんて一人思うが、前はこれでもちょっと小さいって言われるくらいだったと言うことを思い出した。
何で前店長はいきなり旅にいっちゃったんだろう。
考えた所で、私に頼まれたのはこの店で店員を続けてくれと言うことだ。昔もっと居た店員達も頼まれていた店員は続けていたけど結婚やら、さすがにこの寂れた状態で前店長は戻ってこないと思ったのか止めた人もいっぱい居たななんて思った。
考え事にふけっていたせいで少し手が止まっていたのを少しせわしなく動かす。私の机を拭く音やそのときに体重をかけたほうの足の床がキィっと鳴る音や、店長のグラスを拭く音と外の少し騒がしい音だけが店内に聞こえる。
店長との会話はほとんどない。前の店長の時も特に会話をしなかった者同士なのだ。寂しいなんて訳じゃない。楽しくもない。あの時は服を作れなかったけど楽しかったのだ。
今は服を作れなくて、面倒くさくなって、止めたくなって大嫌いになっているのだ。仕事場に好きな人が居るという何ともよく分からない事だけでこんなにも違うのかと一人で黙々と考えながら掃除していく。
机を拭き終わった後に床をほうきで掃いていく。とっても適当に。
それがどうということはないし、別に店長がそれに対して怒る訳でもない。それがいつものことだからだ。だけど、何かいい知れぬ嫌な予感が私を襲う。怒られる訳じゃないだろうけど、何かもっと違う何かだ。でも決していいことではないようなそんな感じだ。
何が起こるかななんて思い放棄を戻そうと店の奥に戻ろうとしたときに「ヒヒノちゃん」と声をかけてきた。顔を向けてどんな風に何を言われるだろうかと若干の不安と言うかどういう感じの思い向けながら「はい」と返事をした。
「……あのね、ヒヒノちゃん。僕さこのお店の、店長ヒヒノちゃんに任せようと思うんだ」
「……は?」
思わず聞き返すと言うよりはただ疑問をぶつけたと言うか声が出た。意味が分からないという意味で。それには分かっただろう店長が「僕も、少しここで働くのきつくなったんだ」なんて言った。私だってきついとは思わないのだろうか。
「僕が居なくなった後は改装してくれてもいいし、別のお店をやってもいいんだ。でも、お店はやってくれると嬉しいな」
そういって、私が疑問をというより文句をぶつける前に「お店始まるからこの話題は、閉店後とかにでもおねがい」なんて言ってささっと入り口のほうに言って準備中のを開店中にしていった。
私もいいたい事はあったがほうきを置きにいって早くも帰ったら何をしようかなんて考えながらカウンターに立った。店長もよく頼まれる酒を用意し始める。
どうせ開店した直後に誰かくることはないんだしなんて思いながらさっさと止めておけばよかったんだなんて昨日も思ったことをまた思った直後に扉が開く音が聞こえた。
早いななんて思った後「いらっしゃいませ」なんて言って入ってきた人を見た。見覚えがあるとまでいかないまでもおぼろげだが知ってる男だった。たしか、前の店長のときによく着ていて忙しくなったらしく全然その後から顔を見なかった。
「……アデルは」
アデル。その名前で思いつく人間は前店長一人でこの人にも説明しないと行けないのかなんて一人面倒くさいななんて思った。
「アデルは旅に出ましたよ」
そういった後顔がこちらを向く。だが目は会わなかった。というよりその目が白く濁っていた。思わず悲鳴を上げそうになる。
「……あんたは」
そう呟いた後近場の席に座る。落ちぶれて頭がおかしくなったって訳じゃないだろうななんて思った後店長に適当に次前店長について何か聞かれた時は任せますと言って注文が決まった何か言ってくるだろとか思いながらまた適当なことを考えとく。
「……オイメリーキナントはあるか?」
私が考えていると同様に相手も人間だから同様に何か考えていたというより何の酒を頼むか考えていたのだろう。その酒の名前を言われて何か思い当たる酒はあっただろうかと悩んでいると「別名は……姫の瞳だったかな」と言われてあの酒の名前そんなんだたんだなんて思う。
姫の瞳何てかわいらしい名前の割に当時のこの酒を造った人間がお姫様の瞳が欲しくてたまらなかったから同じ色のお酒を造ったなんて話があった気がする。珍しい緑色したお酒は綺麗だが飲み物としては遠慮だ。
恐ろしく、度数が高いし馬鹿みたいに甘い。水で割らないと飲めたもんじゃない。さっぱり分けの分からない酒だし正式名称だろうオイメリーキナントは当時のお姫様の名前にこんな名前があったことを思い出してあの話が本当だったのかなんて少し嫌な気持ちになる。
確かにあった何て思ってグラスと水差し、それとオイメリーキナントを持ってくる。「ごゆっくり」なんていってその席を離れた。いや、離れようとした。
「あの、手をどけてくれます」
「ん? まぁ、少しお話に付き合ってくれないか」
「いや、まぁはい」
話し通じてないななんて思いながら面倒な時は一先ず相手の言うことを聞いとくというか、別におっさんの独り言を聞くくらいなら店長も怒らないというか他に客も居ないし別に問題ないし、そこら編は私が本気で怒るなり何なりしてたら店長も止めにくる程度のことだ。
話を聞かずに店で暴れられても困るしななんて多分しないだろうが一応警戒して相手が放し始めるのを待つ。あのよくわからない目で見られるのがどうにも恐ろしいというか気色悪い。
そんな風に思ってるだろうと走らないだろう男がにこりと笑う。そして口を開いたかと思うと分けの分からないことを口走った。
「あんたは、お人形さんみたいな子だね」
あたし生きてるし料理も上手だし しじみの筆箱 @sizimi
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