なれる! SummonEr

クロタ

第1話 ユメへの第一歩

「ここがあの有名な召喚士サモナーの総本山……『Summoners』」

抜けるような青空の下。森の樹木のように乱立するビル群の中、一際高く天に向かってそびえ立ついかにも大手といった佇まいのビルの前に、一人の青年が立っていた。

「つ、遂に俺も憧れてた召喚士サモナーになれるんだ……!」

入口の自動ドアの上に掲げられた銀色の『Summoners』という洒落た筆記体のプレートを眺めて、短めの黒髪の青年は、積年の夢であった『召喚士サモナー』にようやくなれるのだと殊更実感している。

 今日は彼の入社日だった。

 召喚士サモナー数多あまたの若者が憧れる人気職なため、毎年の採用倍率も恐ろしいほど高く、今年大学を卒業したばかりの彼もその荒波に例外なく揉まれた。

「しかし……本当に信じられ無いな。まさか俺なんかがSummonersに採用されたなんて」

 慌ただしく過ぎた過去を思い返しながら、青年はぼんやりと自分の職場となるビルの壁面を見つめる。

「……」

 暫くそのままぼうっとしていた青年だったが、はたと気づき、慌てて右手に巻いた腕時計を確認すると、もう出社の時間が十五分前に迫っていた。

「うわああ!? や、やばい! 初日から遅刻は洒落になんないぞ!」

 軽いパニックに陥りかけながらも、どたばたと会社の入り口へ吸い込まれていく青年の顔には、期待と希望に満ちた明るい笑みが広がっていた。





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