倫理学の行き着く先

動物解放論、というのがある。
著名な倫理学者ピーター・シンガーによれば、あらゆる苦痛は取り去らわれなければならない。そして動物にも苦痛を感じる能力がある。だから、あらゆる動物は苦痛から開放されなければならない。動物解放論はそういう理論だ。

確かに。と思うかも知れない。

実際この議論は倫理学の中でも強力な立場で、ヴィーガン論争などの中心にある議論の一つでもある。
僕らは肉を食いたい。けれど殺して肉を食うことの倫理的悪さの論証も理解できてしまう。

人工肉は科学技術による然るべき応答なのかも知れない。僕らは肉を食うことができ、動物は開放される。
いや、果たして本当にこれで万々歳なのか?
しかしフォルカスは死んでしまった。肉食家たちは逮捕されてしまった。
フォルカスの死は本当に倫理的だったのだろうか?
肉食家たちは自分の欲望を押し殺すべきだったのだろうか?

『フォルカスの倫理的な死』は近未来SFだが、現在の倫理的な問題とも接続している。やさしい筆致で描かれる物語は、それ自体の魅力以上に現実の問題へとつながる可能性を秘めている。

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