駄洒落のような「一本」エピが意外に心にしみるまっとうさで、引き込まれる書き出し
幸せとは何か、そんな深いことまで考えさせらえるようなエピソードが、読みやすく爽やかな文体で描かれています。前向きな気持ちになれる素晴らしい作品です。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(265文字)
「幸せ」ってなんでしょう。不満があるから願うものなのかもしれないし、誰かの犠牲で成り立っているのかもしれない。それでも彼女は他者のために幸せを願い、幸せを届けるのです。近代の欧州を思わせるような街を舞台で、魔女という存在にも自然と説得力があります。魔法とはいったい何なのか。考えさせられるところもありますが、最後は救いを信じたくなる優しいお話です。
読んでいるとまるで陽だまりの中にいるようにぽかぽかと暖かくなります。ひとつひとつの言葉や、文章の繊細さがそうさせるのでしょうか。登場人物は不思議ながらも可愛らしくて、新しい魔女のイメージ。みんなが心のどこかで悩んだり苦しんだりしていることを優しく解いてくれる。そんなぽかぽかで素敵な小説です。
独特な表現の文章です。イヤな意味ではなく、優しく包こまれて幸せな気持ちになれます。
読んでいて苦にならない優しい世界観。幸せ屋さんの存在が、ただただ温かい。言葉の使い方も、個性的なのに読み辛くなく、このような素晴らしい文章を書くのは一種の才能だと思います。
感情表現やセリフに無駄がなく、港町の情景や人々の心遣いが直感的・映像的に伝わる良作。魔女のちょっとマイペースなキャラクター像もコミカルで雰囲気のいいアニメを見ているような気分になりました。「海の街に一本の幸せを」では漁港につきものの可愛い猫ちゃんが登場しますが、実在としてよりはモチーフとしてこの作品を締めるいい仕事をしていそうです。マイペースな猫みたいに幸せになるために必要なヒントを、魔女は手繰り寄せて私達に見せてくれます。この作品との出会いが偶然か必然かは受け取りて次第です。