午後野 有明

「……ここはどこだ?」


目覚めた時、私は何やら狭くて暗い空間に閉じ込められていた。

また、身体はロープのようなもので壁につながれているらしく、うまく身動きがとれない。なんとか身をねじって壁を蹴ってみたが、とても壊せそうにはなかった。


そして、私はあることに気が付いた。

記憶がないのである。

一体いつからここにいるのか。一体私は誰なのか。何もわからないのだ。ただ一つ確かなのは、「ここから出たい」それだけであった。


そんな日々がどれほど続いただろうか。私はついにある決心をした。

そう、この空間からの脱出である。なんとなく、ここから出るのは今日しかない。私はそう感じていた。


身体をねじり、暗闇をかけわけ、私は必死に脱出口を探した。体感時間において、約数時間はそうしていただろう。

そしてついに、私は見つけたのだ。光の入り口。私の出口を。

ついに、ついに、長かったこの暗闇との生活もおさらばだ。


私は全力でその出口から飛び出す。

それと同時に、外にいた女が叫んだ。



「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」


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午後野 有明 @xxxsgm

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