刀と魔法の世界

 この作品を「ありがちな異世界もの」と侮ることなかれ。もし、この作品をそのように言う人が有れば、それはこの作品を味わい尽くせていない人だと思う。それほどのに濃密で重厚な作品だった。

 4人のマレビトの視点から語られる異世界と個々人の苦悩や、現実世界でのトラウマや精神的なゆらめきが、魔法のある世界で一気に発現する様子は宮部みゆきの『ブレイブストーリー』を思わせる。

 しかし、主人公は幼い少年ではなく、苦境も経験し尽くした青年。他のマレビトも一人一人、年齢、性別、経験が異なり、それによって瞳に世界が違う形に映る。その描写がこの作品を、ありがちな異世界ものとは異なる、現実と地続きの人間たちの物語にしている。

 手垢のついた表現だが、この『刀と魔法の世界』を読み、堪能できたことが嬉しいと思う。皆さんにも、ぜひ味わって欲しい。お勧めです。

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