Sequence2 真理と知を追い求める者

「ソクラテスよりも知恵のあるものはいない」


はるか昔、古代ギリシャではそのような言葉が出回った。

しかし、当の本人ソクラテスは、「自分よりも無知なものはない」と考えていたため、たいそう驚いたという。


しかし何故、自分を無知と思うものにそのような噂がたったのか。

それはソクラテスが昼間、道行く人と〝対話〟を行ったからである。


ソクラテスは、道行く人と対話を好み、その対話の中から真理を追求しようとした。

日常会話の中から〝問〟が拾い出され、相手の答えから更なる新しい問が発せられていく。

自己と相手の思い込みドクサを吟味し、時には行き詰まりアポリアに追い詰め、ソクラテスと相手の理論ロゴスをくぐり抜けながらソクラテスは対話を進めていく。


ソクラテスは、既に出来上がった知識を与えるのではなく、青少年らが自ら真理を発見していく手助けをするのである。


そして、ソクラテスは反駁的対話エンコレスという対話術を完成させる。


反駁的対話エンコレスとは、知の開放性を示すものであり、命題の誤りを厳密に検証するものではない。

一つの命題Aに対し、一見関係性のない別の命題B,C,Dをたて、それらから非A(命題Aが命題でない)を導き、Aを考えなおさせるきっかけをつくる、というものである。


さあややこしい。

しかし、この考え方が後の日本の教育方針の軸となっていくのである。

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