宴もたけなわ
「うー、頭が痛い……。明らかに飲み過ぎね」
今の時間は午前11時過ぎ。予想通りの時刻に吟嬢は起きてきた。
「吟嬢、昨日は本当にお疲れ様でした。ただ毎回言うようにそれ程飲んでませんし、仕事中に飲む貴方が悪いんですよ」
「なによ。事件解決の1番の立役者に文句つける気?」
「文句じゃありません。助言です。あっ、あと吟嬢。ニノ蔵商事の山田さんからと中取警部からメールが来てますよ。山田さんからは事件解決に対するお礼と、時期社長は自分になる可能性が高いと云う報告。後は今回の御礼金についててですね。請求金額を出してくれれば即金でその倍額支払うとのことです。いくら請求します?」
「それは後でいいから、中取警部はなんて?」
「はい。2人の今後の事ですね。万石は実行犯なのでどうしても実刑は間逃れない様です」
「まぁ万石はしょうがないわね。私にも襲いかかって来たんだから!このか弱い私によ」
「はいはい、弱い弱い。そして棚卸さんです。彼女の場合はケースが特殊なので司法の判断より先に医学の方面での判断を仰ぐそうです。予想通りに精神病院で鑑定だそうです。ただ良い事も1つ。あれからスミコは出てこないそうです。まあ、1日だけですがね」
「うん、まだ安心はできないわね。そして結果としてスミコの予定通りってことになったのね」
「…意外とあっさりしてるんですね。もっと悔しがると思ってました」
「そうね。悔しくないと言ったら嘘だけどね。でも現実的に考えてそれが1番いいのかなって。
曲がりなりにもジュンコさんは罪を犯している。これは間違いない事実よ。いくら自分が知らないからって罪は消えない。それなら罪を償わなくてならない。ジュンコさんならきっとそう考える筈よ」
「そうですね。自分より他人の痛みに敏感な人ですからね。もう一人の自分がニノ蔵氏の殺害に携わっていたと知ったら相当なショックでしょうね」
自分で言って気が付いた。吟嬢が思っていたことはこういう事か。今回の事件は特殊なので司法では裁きづらい。刑に当て嵌めるなら無理やり当て嵌めるしかない。
それではジュンコさんは償ったとは思わない筈だ。自分の納得行く形で償いたいと思うだろう。それには時間が必要なのだ。いつ答えが出るかわからないくらい長い時間が。
そこまで考えての『1番いい』だったのだ。結局は罪は周りから償わされるのでは意味がない。自分から償わなくてはならない。人の意思を尊重する吟嬢らしい考えではないか。
「彼女なら大丈夫よ。何年かかっても立ち直る。だって私を頼って来たのよ?見る目あると思わない?」
吟嬢はわざとらしく、おどけて言って見せてる。それは何故かは考えないでおこう。隠そうとしている彼女に失礼だと思うから。
「決めた!」
「何がです?」
「ちょっと早いけど1時間後に飲みに行くわよ!昼から飲んでやるー!そしてその請求書をニノ蔵商事に送りつけるわよ」彼女は悪戯っぽく微笑んだ。
「昼から飲むのはどうかと思いますが、請求の件はいいですね。賛成です」
1時間後2人で外に出た。風か涼しくすっかり秋の装いだ。季節はいつでも、しっかりと巡ってくる。
酩探酊 吟嬢 たて こりき @kotarinkyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます