出来損ないの少年の前に現れた凡骨機械が紡ぐ物語における脇役
「やあはじめまして、ぼく狸猫えもん」
正直タヌキにもネコにも見えないその奇妙なダルマみたいな着ぐるみと出会ったのは、昨年の正月頃だった。
友人の
ただ、助けるためという割には、野島くんが劇的に変わったかと言ったらそうでもなかった。相変わらずテストでは酷い点を取り、学校に遅刻しては先生に怒られていたし、
ただ不思議なことに、そのロボットが来てから野島くんを中心にその4人だけで遊ぶことが増えだした。ロボットはみんなの中に違和感なく溶け込んでいて、害もなかったから大人たちも特に何も言わなかった。
ロボットはいつも自分の名前を言っていたが、どうしても最初の方が聞き取りにくく、皆自由に『ノラ』だったり『トラ』だったり『ポコ』だったり好きに呼んでいた。冒頭の漢字は、改めて確認した際わざわざ本人に書いてもらったものである。因みに読み方は頑として書いてくれなかった。
正直、『未来から来たロボット』なんて言葉は一切信じておらず、恥ずかしがり屋の小さな子が着ぐるみに入って遊んでいる、なんてイメージでしかなかった。
それが、日記を読んだことである仮説が浮かび上がったのだ。
つまり、未来の科学者が本を過去に送ったことで歴史が変わり、ネコ型ロボットが作られる未来に切り替わったのだ。そして、僕がこれから期日までにロボットを造るための条件を達成できなければ、未来はまた元に戻り、おそらく『狸猫えもん』が来てからの歴史が丸々無くなってしまう、ということだ。
タイムパラドックスやパラレルワールドなど色々時間移動における理論は読んだことがあるけれども、それはあくまで空想の世界でしかなかった。だから、自分の存在がなくなるかもしれないなんて言われても誰も本気になどしないだろう。
また、下手に誰かに話せば、それこそ技術を悪用したい人間などが現れ、危害を加えられるかもしれない。少なくともこの日記に書かれた設計図は、一目見ただけでどれも現代の技術を越えていることがわかった。
今後万が一僕自身に何かがあった時、その保険としてこの手記を日記に追加している。そして、今これを僕以外の誰かが読んでいるのなら、恐らく僕はもうこの世には存在していないだろう。
どうか、大げさではなく、この世界を守るために、今この本を読んでいる「キミ」に、僕がいままで観察してきた全てを託す。
著者
僕がネコ型ロボットを造るにあたって証明すべき幾つかの有用性の模索活動録 津々浦 麗良 @door-a-neko
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