第13話

ルールがあって法則があって決まり事があって慣習があって法理があって……って言葉で形が決まり、無から有が生まれるなんてことはなにもない。



わたしホァレイの耳に心地よい短い音が入ってくる。それは一定のリズムで続き、だんだんと意味のある音だとわかる。

━━━━ホァコォホァコゥわたしのホァコゥ━━━。

ふりかえると、そこには女が立っている。といっても外見的身体的にざっとみるにわたしホァレイと同じ。同じくらいの年月が過ぎた同じくらいにわがままな顔の、鯨をいつでも殺したいって感じの女の子だ。わかる。あの巨大な鯨って怖いよね。

でも、この子はわたしホァレイを見ていなかった。

見ているのはわたしの仁王立ちの前にかがみ込んで縮こまってる跳龍ツァオロンによく似たわたし30人分の機械だ。

で、わたしも女の視線を追って機械を見上げる。

鯨の中で色褪せたのか全体的に赤っぽいような青っぽいような、所々複雑に混ざりあったような色のところにさらに上塗りされた黒い粘液ジェルと砂とよくわからない点々模様。

音もなくいつのまにかわたしの横に通り過ぎた女が、機械の足下でさっきわたしがしたみたいに頬を機械に擦り寄せる。

モゴモゴボソボソ喋り続けていて、普段人の話すことに興味のないわたしホァレイもつい近寄って耳を近づける。

「今日はいっぱい食べられました明日もいっぱい食べたいとおもいます」

みたいなことしか言ってなくてくだらないと思うけれど、わたしは彼女の声をもっと聴いていたいという理由で聞いている。

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わたしのツァオロン @yukiwow

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