第34話

 その日以来、僕は自室に引き籠った。

 何をする気力も湧かなかった。ただ、食べて、寝て、生きる実感など欠片も持たず、それでも、漫然と生きた。ただ、消えたくないという理由で。


 僕はただの人間だ。


 物語のヒーローなんかじゃない。


 だから、彼女を救う事なんて、最初から出来なかったのだ。


 そんな風に被害者面して、自己を肯定して、なんとか存在を保っていた。


 でも、最近は消えてしまうのもいいかもしれないと思えてきた。


 なぜなら、「向こう側」には、僕を恨んで死んだミキハは絶対に居ないのだから。


 こんな狂った世界にならなければ、僕がミキハに恨まれることもなかったのではないだろうか。いや、そもそも道連れにしようという考えすら起こらず、僕達の運命が交わることもなかったのだろうか。どっちでもいい。悪いのは全部神様だ。

 都合のいい考えで神様を恨み、僕は残りの人生を過ごしていく。

 この人生にどんな風に幕を引こうか。

 生きる目的なんてないけれど、僕は消えるのも死ぬのも怖いので、とりあえず生きている。誰だってそうだ。きっとそうだ。

 ずっとカーテンを引いた薄暗い部屋の中。僕はもう自分がどんな色をしているのかも知らない。

                                   〈了〉

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Ending そして世界が滅ぶまで 雪瀬ひうろ @hiuro

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