あたしこと七織千夜と、チカ(水図千夏)は縦長の丸太のところで残念すぎる出会いをするが……。
まず、自分を暗黒仮面とか言ってしまう痛々しいチカがインパクト大。見た目も口調も完全なる中二病の発症者であり、ラノベとしては及第点を軽く超えたキャラクターだろう。しかも仮面を取った素顔は凛々しくて美人とか、最強過ぎっ。
二人の会話に青春を感じつつ読み進めていくと、チカが『何か』と戦っていること、そして秘密を抱いていることも知ることになるが、途中から切ない展開になっていき、いい意味で期待を裏切られた。
「戦友(ダチ)になって世界と戦うんじゃなかったのか? 七織が可哀想だからチカよ、早く戻ってこーいっ」
――これは私の心の叫びです(笑)
濃密で詳細な物語の顛末。そして仰々しい舞台の存在が冒頭で提示されます。
先に続く物語からは、情景と小道具の質感に対するこだわりが見て取れました。この事から、前述の舞台に対する期待が高まります。
独特の生々しさと、事象を雑多に捉える視点は、
ダークで退廃的な舞台を構築するのに、必要不可欠な素養である事を知っていたので、この描写力がもしも、
現実見のある舞台ならではなく、非現実な舞台に活かされたらどうなるのだろう、と――期待を否が応でも高めます!
何気に自分の好きなガールミーツガールらしい走り出しでウホホイと歓喜!
更に喜ばしかったのは、多重に騙しを利かせた彼女のキャラクター造形でした。
掴みどころのない所作と、時の積み重ねを思わせる出で立ち、仮面の存在によって謎の奥行きを演出させ、尚且つ――
<チカ>という意味合いを幾多にも派生させた、語句に富んだ遊び心の方向性が、以上の要素と見事に合致させて強固なパーソナリティを形成しています。こんなん惚れてしまいますわ!
視点を一般的な感性の持ち主であるちやちゃんに置いて、読者の共感を引き出す造りになっているのも良かったです。
突飛で独りよがりな中二モノに見せかけてその本質は、計算高い綿密なファンタジーですよコレは!
あと<暗黒微笑>という懐かしいスラングにはフフッとなりました。ではまた、本日もおつかれさまです!