実力ある書き手が、頭の中にあるオモチャ箱を”えいや!”とひっくり返し、その中身がぶちまけられる勢いそのままに執筆しているかの様なパワー溢れる時代娯楽モノ。
とにかく遊び心に溢れたダイナミックな演出が絶え間なく続き、どこか型にはまった感のあるキャラクターと世界観を”どこかで読んだような?”とは決して感じさせません。
笑いの要素を多分に含む会話劇と時代モノっぽい講談調(?)の地の文との対比は他作には無いモノで、時折挿入される”あやかし”を匂わす描写にゾクッとさせられたりと、緩急ついた文章は物語を先へ先へと読み進めさせます。
おそらく物語は佳境。
”笑い”や”オフザケ”といった展開の裏で隠れがちとなっている、キャラクター各々が抱えて来た運命や想いといった代物が最終的にどう決算されるのか?
一読者として、そこを凄く楽しみにしています。
追伸:タイトルに『からくり隠密同心』を加えてあげても……いいんじゃ((((;´・ω・`)))
宝刀『古骨光月(ここつこうげつ)』を護り伝える師範代・桜良兵乃進(さくらひょうのしん)は、双子の美しい姉・綺乃とともに道場を切り盛りしていた。教え子の子どもたちや、定町廻の横井一麿、居候の絵描き・恋町春日、謎のピンク忍者・佐七、九十九らに囲まれた、賑やかな日々。ある日、一麿が「ご禁制」の黄表紙本を持ってきたところから、兵乃進の災難は始まった――。
そのまま囃子歌になりそうなほどリズミカルな文章で、軽快に読めます。エロやピンクなどといった現代用語が頻出していても、基本にしっかりとした時代考証と文章力がうかがえ、安心感がありました。賑やかで弾むような会話と、時に現れる人情、妖艶な描写にうならされます。
「恋愛コンテスト落選」とわざわざ書いていらっしゃいますが、コメディ部門があれば、と思いました。
楽しい和風あやかし譚です。