凡人よ、これが天才だ。

なんといっても主人公のキャラがリアル極まりない。
私は幸いにして、いわゆる天才と自称する人物に何人か会った経験があるが、この主人公の言動は驚くほど「彼ら」に似ている。「神」に対する態度や、冒険者ギルドにおける行動の種類や言葉尻の捉え方など、「彼ら」そのものである。
特にヒロインが娼婦であるという点には舌を巻いた。
女性の魅力はいくつもあるが、主なものとして愛の他に、若さ、美しさ、強い個性、処女性、床上手、などである。愛と美しさにおいては異世界ノベルにおいて当たり前だ。だが、「彼ら」にとっては、それ以外のポイントのいくつかはあってはならない。強い個性はダメだ。「彼ら」の上位に立つ可能性があるからだ。処女性もダメだ。凡人が最も求めるものだからだ。つまり「彼ら」が選ぶべきは、若く、美しく、強い個性がなく、反処女性を持ち、床上手の、つまり売れっ子娼婦しかありえないのだ。おまけに社会的弱者をあえて選んだ高貴な人物という評価までついてくる。
この作者の視線と描写は凄まじいの一言につきる。
作者は「彼ら」がとても身近にいて観察できる立場にあるとしか思えない。

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