第5話 終わり


『拝啓、誠様。

 いかがお過ごしでしょうか。

 私は元気です。とは言えないのかな?


 私は元気でしたか?


 もし、あなたがこの手紙を読んでいるのならば、もうそうなってしまったのでしょう。私は死んでしまったのでしょう。


 すっごく変な感じがします。

 これを書いているときは生きているので、これが本当に開かれるのか、そしてまーくんに読まれるのかがなんか不安で、背中がもぞもぞします。

 もしかしたら、読まれることはないのかもしれません。

 私は死んだ時のために、これを書いています。


 私が死んだら、あなたに渡るように母には伝えました。

 今はお母さんがいるから安心だけど、このままお母さんが先に行ってしまったら、この手紙は誰が届けてくれるのでしょうか? 私は誰が面倒みてくれるのでしょうか。何故か不安になりました。お母さんに聞いたら、やっぱりあなたの名前が出ました。なんでもあなたに任せていいわけでもないんじゃないかと少し思いました。

 


 あなたはずっと私についてきてくれました。

 まーくんが私のことが好きすぎるから、私も安心してたし、甘えてたと思います。でも、甘えちゃいけないなって思ってました。ずっと。


 私はあなたのその優しすぎるところが、甘えてしまえそうなところが好きであり、自分を嫌いになってしまいそうな原因でした。


 だって、私の病気は呪いだから。私には病気があるから。そんな私と居ることを選択すると、あなたは縛られてしまうから。私の思いが呪いになっちゃわないように。なんてずっと考えてました。


 それを全部話したら、あなたは、それでも私についてきてしまいそうなの。それがすごく怖かった。

 これから私が30歳とか40歳で死んでしまったら、おじさんになるあなたが一人で取り残されてしまう、それもすごく悲しいよ、まーくん。


 あなたはあなたの幸せを見つけてほしいの。出来れば、私ではない、健康で、綺麗で、素敵な人。


 あなたは、あなたのために生きて良いんだよって伝えたかったの。


 本当にありがとう。幸せになってね。ありがとうね。さよならでした。

                               柚子より』

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏と病院 水乃 素直 @shinkulock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ