第24話

紅葉(もみじ)ちゃんとのあの出来事から数日たった今でも俺は紅葉ちゃんの前では緊張してしまう。そんな姿を持て桜たちはなぜか悔しがっているようにも見えるが俺には意味が分からない。

モコも次第に表情が暗くなってきている気がする。


そしてまた数日が過ぎた。

DNA鑑定の結果も届いた。

鑑定結果がこういう結果になるとは誰が想像していたのだろうか。


「紅葉ちゃん」

「なんなのじゃ?」

「紅葉ちゃんは俺の妹だって言ったよね?」

紅葉ちゃんとキスをしてから初めて真面目に話した。

「そうじゃが…。なんでじゃ?」

太陽には妹の記憶が全くない。

小さいときに居なくなった母親と何かあってDNA鑑定がどうであろうと紅葉ちゃんと事実上は妹なのかもしれない。

「俺には小さい頃、紅葉ちゃんとの思い出ないんだ。だから小さい頃の思い出を教えて欲しいんだ」

紅葉ちゃんは悲しい表情を浮かべたがすぐにわかったのじゃと明るく教えてくれた。

「太陽(たいよう)お兄ちゃんは覚えてないと思うけど…」


紅葉ちゃんと俺らが初めて出会ったのは六年前の小学三年生のときらしい。


「なーつーみー。早く早く」

「待ってよ!太陽」

太陽と夏(なつ)美(み)は夏休み中毎日一緒にいた。

雨の日はどちらかの家で宿題をしていた。宿題と言っても小学生なら多分全員やるだろう自由研究だ。

二人はこの頃からお城や宮殿など昔の建造物を見るのが好きであった。

その為雨の日はパソコンや誕生日で両親からもらったお城図鑑でどこのお城に見学に行くか決めていた。

二人が今年行こうとしていたお城は耐震工事のため見学することが出来なかったため、図鑑に載ってない家の近くにある二人の秘密基地にしていた宮殿へ見学することにした。図鑑に載っていないから行くというのもあるが一番は家から近くお金がかからない場所だからこの場所を選んだのだ。

宮殿のある場所は森の中にある小さな木の中にある。

いつものように草むらをかけわけ宮殿を目指していると、気の近くで小さな女の子が泣いていた。

「どうしたの?大丈夫?」

太陽は恐る恐る女の子に声をかけてみたが女の子はさらに泣き出してしまった。

「何やってるのよ太陽。大丈夫?ママとはぐれちゃったの?お姉ちゃんがままのところまで連れで言ってあげるよ」

女の子は泣いている顔を上げ夏美を見た。

「ママとはぐれたわけじゃないのじゃ。ただ、ひとりで遊ぶのが寂しくなっただけなのじゃ」

女の子は恥ずかしくなったのな顔を真っ赤にしてまたうつむいてしまった。

太陽と夏美は、お互いにこっと顔を合わせ言った。

「「一緒に遊ぼう。」」

女の子は顔を上げお日様のように明るい笑顔でありがとうなのじゃと三人で遊ぶことにした。

「俺の名前は杉並太陽!小三だ!そして、このちんちくりんはーーーー」

「ちんちくりんいうなー!私も太陽と同じで小学三年生だよ!私の名前は吉川夏美。よしかわって書いてきっかわって読むんだよ!珍しいでしょ!お姉ちゃんって呼んでね」

「え、じゃあお兄ちゃんって俺のことも呼んでね」

ちっちゃいことでもすぐ張り合いたくなる太陽は夏美に対抗したのだろう。

「太陽お兄ちゃん?夏美お姉ちゃん?」

俺たちを指さしながら聞く姿がかわいかった。

夏美も目を輝かせながらうん。うん。とこたえている。

「私の名前は紅葉なのじゃ。八才なのじゃ。よろしくなのじゃ」

「紅葉ちゃん。かわいい名前だね」

「ありがとうなのじゃ」

女の子同士意気投合して話が盛り上がっている。

そこに入れない俺は少し寂しい。

「それじゃあ何して遊ぶ?」

森の中なのでやることは限られる。

男子だけなら木登りだったり、昆虫探しとか楽しい場所だが、女の子が森の中なので遊ぶのか想像出来ない。

「秘密基地を作りたい」

秘密基地も男子だけなのかと思っていたが、そういう固定概念は持たない方が良いなと改めて思った。

「秘密基地面白そうなのじゃ」

紅葉ちゃんは立ち上がりと走り出していった。

その後を俺らはついていくとそこには大きな一本の木と広いスペースがあった。

まさにその場所は秘密基地を作ってくださいと言わんばかりに何もかもが揃っていた。

「紅葉ちゃんよくこの場所知ってたね」

「えへへ。すごいじゃろ」

紅葉ちゃんは自慢げに言う。

すると、ぽつりぽつりと雨が降ってきた。

なので、今日は場所を見つけただけで帰ることにした。

紅葉ちゃんは不満気な顔をしていたがまた晴れた日に遊ぼうと約束をして別れた。


次の日、朝起きると昨日の雨がまだ降り続いていた。

夏美は今日も俺の家に来てTVゲームをしている。

「あめだね。紅葉ちゃんとあそびたかったなぁ」

野球ゲームをやりながら夏美はつぶやく。

「夏美は弱いなぁ〜。また完封勝利だよ〜」

太陽は雨だから仕方がないと割り切っているしく、太陽は楽しく野球ゲームをしている。

「太陽!行こうよ〜行こうよ〜。秘密基地三人で作ろうよ〜」

夏美は秘密基地も作りたかったらしいくうるうると流しながら駄々をこね始めた。

雨だからと言い聞かせようとするが、一方通行になるだけで話を聞いてくれない。

なので太陽は明日は晴れるといいねと夏美を引き寄せ抱きしめた。

夏美はほほを赤くしてうんと太陽に抱きついた。


次の日、昨日の雨が嘘のようによく晴れた。

八月のあの上からも下からもじりじりと熱してくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

放課後の宮殿。 わ→たく。 @yuu_minase

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ