弱いもの虐めはいやだなぁと、誰よりも強く優しい彼はそう言った。

獣の頭の探偵と聞いて、これはとある往年の傑作の再来、とんでもなくハードボイルドな内容に違いないと思って、私はこの作品を開きました。

……気が付けば読み終わっておりました。
そうして、胸の内に去来したのは、なんとも優しい感情だったのです。

主人公は、どこか抜けているようでいて、しかしとても賢いです。本能的なものなのか、嗅覚が飛び受けています。
たくさんの問題、それこそ無理難題が、探偵である彼の前には降りかかってくるのですが、気が付けばすべて丸くおさまっています。
人徳──いえ、人虎徳、でしょうか。

彼が作中で掲げたスタンスは、とても魅力的で、理想的で、だからこそ難しいものでした。
それでも彼は、それを最後まで貫いたのです。

結果、私は清々しい胸中で、読み終えることができました。

いろんな意味で胸がすき、胸の奥が温かくなる。

そんな探偵の物語を、あなたも読んではみませんか?

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