エピローグ

 翌日の放課後。

 「一つ気になることがあるんだが」

 都市研の部室に入ると、玲子が開口一番ある疑問を投げ掛けた。

 「そもそも、呪われた本の噂を流したのは、如月先輩だったってことでいいのか?」

 「会長さんに直接訊けば明らかでしょうけれど、恐らく答えはノーね」

 「やっぱりそうか」

 「えぇ、会長さんはあの作品が純粋に評価されることを望んでいた。それにもかかわらず、会長さん自ら噂をでっち上げ、無理矢理読者を獲得するような手段をとったとは思えない。今回の出来事は、偶然広まっていた噂を後から利用したに過ぎないと推理しているわ」

 「そうすると、噂を流したのは……先輩に協力した図書委員か、偶然あの本を手にした生徒ってところか」

 「そうね。呪われた本の噂自体は解決できたけれど、何故、このような噂が広まったのか、自然発生的なものなのか、人為的なものなのか、はたまた、特別な力が作用したのか……フフ、この点については要調査ね」

 「呪われた本自体については完全に都市伝説ではなかったわけだが、その根元については必ずしもそうじゃないってとこか」

 「すみません! ここは都市伝説研究部の部室でしょうか?」

 扉をノックする音に続いて、女性の声が廊下から響いてきた。

 ノック音がするよりも前に、既に冬子は視線を扉へと移しており、未知の訪問者に心をおどらせていた。

 「本日は入部希望に参りました」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未完のメッセージ 那須村 裕 @nasumura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ