どうもです。
『コウタイする絵画』が無事に完結しました。
読んで下さった方には、心から感謝致します。

今作では、前作の『紅キ罰』とは全く違うことがやりたいと思い、
中編から短編へ、
男主人公から女性主人公へ、
一人称視点から三人称視点へ、
暗い雰囲気から少し明るい雰囲気へ、
残酷描写から日常的な描写へ、
密室空間から学校等の広い空間へ、
本格派推理小説からオカルトミステリーへ……。
とにかく、ガラっという音が聞こえるくらいには「別物」を目指しました。

今回は、自分の小説を自分で考察したいと思います。
要は、種明かしと裏話のご紹介です。
以下は、ネタバレしかないので、
『コウタイする絵画』を一読して頂いた後にお読み頂くと、
より楽しめると思います。

【!以下、ネタバレ注意!】














~プロローグ~
Q1 プロローグはなんだったのか?
A1 いわゆる、「叙述トリック」の類です。
   叙述トリックと聞くと、嫌悪される方もいらっしゃると思いますが、
   個人的に一度やってみたかったので、チャレンジしてみました。
   プロローグだけが一人称視点で描かれ、
   第1話~エピローグは三人称視点になっていること、
   プロローグと、それ以降という区切りを置いていること、
   冬子が、部長に対する嫌がらせ説に懐疑的なこと、
   冬子の部長に対する質問において、部長の応答が怪しいこと、
   滝野の話で、部長は部員たちに、コンクール用の絵が無くなったこと
   もっと言うと、部長の絵が消失したこと自体説明していないこと、
   等々を総合すれば、プロローグの内容を怪しむ
   契機になったのではないかと思います。
   何より、『紅キ罰』の小説情報において、
   「叙述トリックの類はないので」と言っておきながら、
   次作で早速叙述トリックを仕掛けたこと自体が、
   一番の叙述トリックだったのかなと思います。

~第1話~
Q2 2枚目のユウレイ絵画に車が描かれていなかった理由は?
A2 2枚目以降は、高校3年になった部長が描いたものですが、
   シュウヘイの交通事故のトラウマから、車を描写することに
   潜在的な抵抗があったためだと思われます。

Q3 絵の少年(シュウヘイ)が後退した理由は?
A3 ユウレイ絵画の噂として、広まりやすくするために、
   部長が意図的にそのように描いたのか、それとも、
   やはり、シュウヘイの事故の衝撃から、
   事故後の今になって、シュウヘイの絵を描くことに抵抗があったのか、
   それは部長に直接訊いてみないとわかりません。

Q4 部長が話していた「オカルトに詳しい奴」とは?
A4 今作では未登場ですが、いずれ、登場する機会があります。

Q5 1枚目と2枚目で描法が異なるのは何故?
A5 時間が経てば、絵の描き方も変化するだろうということと、
   もう一つは、部長がシュウヘイの記憶を封印した時に、
   (ユウレイ絵画1枚目を描いた)当時の描法さえも封印し、
   異なる描き方で絵を描き続けたということが考えられます。

Q6 2枚目にある円形の染みは?
A6 部長は、絵の少年が誰なのか思い出せないまま
   2枚目の絵画を作成しましたが、
   絵の少年を描いているうちに、
   無意識に零れた涙の跡が、円形の染みになりました。
   2枚目のシュウヘイの表情が沈んでいるように見えるのは、
   かつての友人を思い出せないという部長の悲しみと、
   思い出してもらえないシュウヘイの悲しみの念が
   シンクロした結果だったのかもしれません。

Q7 部長が風景画ばかり描くようになったのは?
A7 シュウヘイの事故があった後、
   部長は独り公園で絵を描き続けますが、
   そこにシュウヘイの姿はなく、風景ばかりを描き続けたため
   だと思われます。

Q8 部長が、2枚目の摩り替えを「練習用の絵」にしたのは?
A8 1枚目の絵をコンクール用の絵にしたのは、
   美術部顧問を説得するためでしたが、
   2枚目の絵もコンクール用の絵と説明しなかったのは、
   コンクール用の絵ばかりが狙われたとすると、
   玲子が考えていたような、
   「部長に対する嫌がらせ」説が浮上すると思い、
   誤魔化しのために「練習用」と説明したようです。

~第2話~
Q9 滝野が、無くなった絵がコンクール用であることを知らなかったのは何故?
A9 部長は4月2日に部員たちにユウレイ絵画1枚目を見せますが、
   この時にはまだ、部長の頭にユウレイ絵画の噂を広めるという
   計画はありませんでした。
   ですので、部長の絵が無くなるという話自体、この時にはしていません。
   その後、噂を広めることを思い付き、部長の絵が消失したことにしますが、
   それがコンクール用のものであるとしたのは、さらに後の、
   冬子を職員室で見掛けた後のことで、かつ、このことは、
   噂としては広まっていません。
   よって、滝野は冬子の話を聞いて初めて知ったわけですね。

Q10 玲子が「霊の類ねぇ……他人事ではない」と言ったのは?
A10 これがどういう意味なのかは、今後のお話で明らかになる予定です。

Q11 梶井基次郎の件はどういう意図?
A11 このお話は、端的に言えば、創作話が、あたかも現実的なものとして、
   広く伝播した実例を示すものでした。
   そして、今作も、部長のユウレイ絵画の噂という創作話が、
   あたかも現実に起こったかのように全学年に広まったということを
   暗示するためのものでした。

Q12 冬子が唐突に老人に杖の話をしたのは何故?
A12 昔のことを訊く前提として、言葉は悪いですが、老人の記憶の正確さを
   試すために、このようなことを訊ねたのかもしれません。
   冬子にこのことを訊ねても、おそらく、「杖に興味があっただけよ」、
   と応えるでしょうが。

Q13 絵を描いている少年(黒部部長)が、シュウヘイの事故後も
   公園に通い続けたのは何故?
A13 部長としては、いつも通りに行動しなければならない、
   いつもと違う行動をとってしまえば、
   シュウヘイの事故のことを受け入れることになると考えたのでしょう。
   いつもの公園、いつものブランコで、いつものように絵を描くことで、
   いつか、シュウヘイが目の前に現れることを待っていたのだと思います。

Q14 夜一って何者?
A14 この人物も、今後の作品で登場する機会があるかもしれません。

Q15 冬子が夜一に頼んだ内容は?
A15 3点あります。
   1つ目は、水縞公園であった交通事故の被害者の特定。
   2つ目は、柳國高校でその被害者と同姓の人物がいないか。
   3つ目は、GPS捜査のための、部長の住所の調査です。

~第3話~
Q16 玲子の「こっちの噂も一苦労」とは?
A16 都市研シリーズ第2弾でお見せできると思います。

Q17 部長の「騙していたのは俺の方なんだ。
   俺こそ、君たちには申し訳ないことをした」について。
A17 これには、冬子たちだけでなく、読者の方を騙して申し訳ないという
   気持ちも込めました。
   「騙していたのは作者の方なんだ。
   作者こそ、読者の方々には申し訳ないことをした」

Q18 椎橋先生は何故、絵を持って部長を訪ねたのか?
A18 10年ほど前のことなので、この絵を描いてくれたよね、
   という風に思い出してもらうきっかけにするためです。

Q19 椎橋先生は何故、すぐに絵を取り戻しに来なかったのか?
A19 この疑問が、私がこの小説で力を入れた点の一つなのですが、
   椎橋先生にとって、
   この絵は弟の形見ともいえる大事なもののはずでした。
   しかし、ユウレイ絵画の噂が流され、その内容はというと、
   不思議な絵が現れるとともに、部長の絵が消失したというもの。
   このタイミングで椎橋先生が名乗り出れば、
   部長の絵を盗んだ犯人として疑われかねず、
   また、新任教師という立場の弱さも相まって、
   椎橋先生としてはどうすべきか葛藤していた、というのが答えです。

Q20 部長は何故、シュウヘイのことを忘れてしまったのか?
A20 部長は、目の前でシュウヘイが轢かれる光景を見て、
   一時は、それが現実ではないと否定するために、
   以前と変わらない日常を送っていました。
   しかし、いつの日か、自覚したのか、
   あるいは、偶然、シュウヘイの死を知ってしまったのか、
   部長は、シュウヘイの死という想像を絶するストレスから逃れるために、
   自己防衛的に、シュウヘイの存在そのものを記憶から封印しました。
   ただ、それは同時に、シュウヘイと過ごした日々を無かったことに
   することを意味していました。 

~エピローグ~
Q21 絵のタイトルとは?
A21 そもそも、ユウレイ絵画1枚目のタイトルなのか、
   2枚目・3枚目なのか、新たに描き下ろしたものなのか、
   その点は不明です。
   ただ、タイトルについては、
   少年が、歌を唄っているということ、
   冬子がダジャレ好きであること、
   第1話の玲子との遣り取りを思い出していただければ、
   答えが見つかると思います。

私からは以上です。
いずれ、この近況ノートにもコメントができるようになるそうなので、
何かあれば、その折にコメントしていただければと思います。

それでは、また。