文字による表現・小説が廃れてしまった未来の世界。映像でもなければ音楽でもなく、なぜ文字というものを使って表現するのか。言葉で表現することの焦ったさに悩む一方、それ以外では得られない喜びがある。そんな文字書きのやりがいに、改めて気づかせてくれる作品です。作者様は本当に文章表現というものにこだわりを持たれていて、言葉の美しさを探求されている方なのかな、と想像しました。
ここには書くのが好きな人がいるように、読むのが好きな人もいて。だから「吾々」はこの作品において最後の希望のような存在だ。新しいものの良さも、古きものの良さもどちらも捨てがたい。失うものが多すぎて、それに慣れていってしまうけれど、ifの世界は失う前に私たちに問いかけ、気付かせてくれる。登場人物たちの印象が前半と後半で変わるのだけれど、もしかするとそれも、伝えるメッセージのインパクトに貢献しているのかもしれません。
日本語は本当に表現豊が豊かです。言葉、文章でないと表現できない繊細さがあります。将来、この物語のようには絶対にならないと言い切れません。ですが、それでも、小説は残り続けて欲しいです。残り続けると思います。
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