騙される者の狂気

ふつう犯罪は、犯すほうが常軌を逸した精神の持ち主で、被害者は平常なものだが、「騙す」という行為に至ってはこれが逆転する。

騙す側の友人は至って「冷静」である。きちんと芝居ができるほどに。一方の被害者は、もはや正気を失って、解決策にもならない方法を試して失敗を重ね、カネを求めるゾンビのように街をさまよう。

冷静になって回想録を書く著者の眼は、騙す側の人間のように「冷静」だ。そこにこの物語のおもしろさが詰まっている。

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