宇宙(大将軍)やべえ

 ぶっちゃけ「呂布です」って言いたくなるよねこのひと。

 あっいや、わかってます。歴史物語のコメントで一番やっちゃいけないのは、他の時代での比定だと思ってます。しかも侯景と呂布とでは、梟雄となったライフタイムもまるで違う。それでもなお、その武の故に翻弄され、無道を働き、滅んだ姿には、どこか両者を重ねずにおれない。

 漢が滅んでより、隋が天下を統一するまでには、実に四度の鼎立が起こっています。曹操、劉備、孫権。劉曜、石勒、王導。慕容儁、苻堅、桓温。そして、高歓、宇文泰、蕭衍。これら天下に己の身命をベットして丁々発止のやり取りを繰り広げた英雄らと引き比べれば、侯景は嫌でも一段落ちる存在とならざるを得ません。

 実際のところ、作中でも高歓や宇文泰、また彼らの上役である爾朱栄が活躍しているときには、侯景の存在は脇役、端役でしかありませんでした。というか高歓やべえ。明らかに魔王でしょあんなん。その向こうを張る宇文泰も異次元。そして侯景も、そういう異次元の存在どもから重く見られていたわけでもあり。

 魏晋南北朝期に中国で起こった鼎立の立役者たちには、誰一人としてつまらない人物がいません。そしてこの物語が語る侯景は、そんな彼らに、深い爪痕を刻んでいます。

 宇宙大将軍(笑)と現代日本人から揶揄される彼ではありますが、その気宇の壮大さ、ここにかけては「凡俗には到底測りきれるはずがない」と言い切って良いでしょう。

 測りきれぬものの大小を論じてみたところでなんになりましょう。宇宙はやべえ。なら、侯景もやべえのです。