絵本で見たいと思った。さらりと優しく、しかしずっしり余韻の残るお話。
いつも笑顔で誰からも好かれるノスリさん。
ある日、知らない少年──イトヨくんから「嘘つき」と言われてしまう。
ノスリさんは自分を偽って社会に適応している。
イトヨくんは子供ということもあるが、僅かな嘘が許せない。
それはこんな流れからも分かる。
「もちろんです。さあ、山に帰りましょう」
「ちがう。僕の帰るところは湖なんだ」
「じゃあ、帰るのはやめましょう。山に行きましょう。それならいいでしょう?」
「うん。山に……行く」
ノスリさんが沢山の本に対して言う「私の友達」という言葉は、本当の友達という意味だろう。ただ本は未知の世界を見せてはくれるが、こちらから働きかけることは出来ない。一方的で寂しいものだ。
イトヨくんがノスリさんに言った「友達になってくれる?」という言葉は、嘘偽りのない言葉。社交辞令でも、下心があるわけでもない。真っすぐで、そのままの言葉だ。だからこそ、ノスリさんは心底嬉しかったに違いない。
反対に、街の人に言われた「でもノスリちゃんはこの街の人みんなが友達だろう?」という言葉は皮肉だ。彼女は自分の友達はイトヨくんだけと分かってしまったから。
自分で自分の心を騙してきたことに気づいたノスリさんが選んだことは何だったのか。その結末は是非とも本文で。
街のみんなに好かれる、いつも笑顔のノスリさん。
本が大好きで、男たちの求婚には耳を貸さず、
晴れの日には街にやって来て、決まった買い物をする。
ノスリさんがどこに住んでいるのか、誰も知らない。
ある日、ノスリさんの前に現れた男の子は、
ノスリさんにいきなり「嘘つき」と言い放った。
それはどういう意味だろう? 男の子は何者だろう?
思い悩むノスリさんの前に、男の子は再び現れて……。
児童文学のような語り口で描かれるストーリーは
教訓めいたものを抱えながらも説教くさくならず、
ノスリとイトヨ、少し不思議な雰囲気の2人の友情と
2人を取り巻く不条理が、切なくも端正に紡がれる。
孤独に飛ぶ鳥に救いは訪れない。
でも、たまに、こういう悲しみを読みたくなる。
誰かに 呼ばれてる気がして、此処に辿り着いた。
いつもの道を 歩いていく ノスリさんを 見かけたんだ。
その街は、淡くて やさしくて、落ち着けるようで
でも、あなたが 住める場所では なかったんだね。
君が 雨の日に ともだちになった 小さな少年。
本棚の前で 黙ったまま お茶を 飲める しあわせの享受。
おだやかな 山の精。さみしがりやの 水の精。
笑顔は 人を 安心させるためのもの。
でも、笑顔は 本当のきもちを 隠してしまうこともあるから。
すきな人の笑顔を 心配してしまうよね、ほんとなの?って。
そして、変わっていくものの 罪を想う。
もっと 一緒にいたかったね、ふたりで。
君のワンピースの色が、そっと物語の色のように ふんわりと存在して
でもいつしか セピア色になって、空に 吸い込まれていってしまった。