詩「沼の花」

晴見 紘衣

沼の花

君の

深い痛みを見つめて目がしみた

君の

暗い怯えを嗅いで息がつまった


助けてって言葉は

助けて、以外の言葉の中にあった

聴き逃さなかったこと、

それだけは自分に感謝している

なんて、慰めみたいな言い訳


濁った沼に噛みつかれて

沈んでいく君を引っ張り上げたかった

力が足りないという現実は吐きそうなほど不味い


君が最後に見た景色の中に

誰がいたか

光はあったか


もっと、もっと、って

できなかったことばかり考えて蹲ってしまうけど

もしかしたら、いやたぶん

どれだけ手を尽くしたってできたことには限りがあって

もっと、もっと、って

悔しさにむせぶのは無い物ねだりの思い上がりか


君を無にするものがこの悲観なら

君を花にすることが生きる希望だ

澱んだ沼だからこそ咲く花がある

というのがこの胸に咲いた希望だ


君が知らない、君への約束だ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩「沼の花」 晴見 紘衣 @ha-rumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ