〔V.O.I.D〕

ぽてかわいもた

第1話  おはよう

 「おはよう」

荒谷家の朝はそんなに早くない

成績優秀者に認められる、学内の施設(学生寮などでは断じてなくほとんど一軒家)に妹と二人で暮らしている。

階段をおりると、妹が先に食事をとっていた

『ほいおはよー』

相も変わらず適当な挨拶だなぁと肩をすくめる僕の耳にニュース速報が流れ込む

アナウンサー〔-速報です。たった今、活動中のテロリストが新たな犯行声明動画を動画投稿サイト”メーツベ”に投降した模様です。声明内容は――――〕

「またこいつらか。社会不適合者の集まりが、あんまり迷惑をかけないで欲しいもんだ。大体、どちらが優秀かっていうのも決まり切ってるのに…懲りずにまあ」

『そうだねー。今回は名前が違うらしいけど、結局今までも国家権力様にボコボコにされて、幹部の人が何人も逮捕されてるしねー。どうせ壊滅寸前の組織を一つにまとめて~ってな感じでしょ』


 食事を終えて大学へと向かう


「みどりー、ちゃんと鍵閉めて高校行くんだぞー」

『うぇ~い、お兄ちゃんも気を付けて行ってらっしゃーい』


(テロリストか物騒だな)


政府が公務員をいわゆるMARCH(明山・青政・立央・中教・法治)大学以上に定め、それ以外は書類すらも受け取らないという状況になってからすでに21年がたっている。

こんな世の中にあらがおうとする人間は少なからず存在するが、行動に移せばそれこそテロリスト扱いだ。


『よっ!オハヨ!』

「ああ、おはよう」


同じゼミの岡中峻矢だ。人当たりが良くお人好しで人の話を最後まで聞かない。

顔はブスの分類に入るだろうがよくモテる。

こいつと付き合う女はかわいそうだと思うほど―


『そういやさ!!これ見た?』


彼が端末の画面を見せてくる


「え、ああ。朝ニュースでやってたテロr」

『そうそう!これマジだと思う?』

「たしか…グループが前のと違うんだっけ?」

『そうそう!…ってお前内容知らないの?』

「まあ…その、興味ないし」

『うわーないわー』

『イヤホン貸してやるから聞いてみろよな!』

「ああ…うんじゃあ。ちょっとお借りして」


そこには五人の人間?が座っていた

廃墟のようなところで撮影をしているのか薄暗い

窓の外に見える満月がかなり明るく映る


〔やあおはよう。学歴社会に洗脳されたゴミの皆様。〕

〔私たちはV.O.I.D〕

ピントが合ってきて徐々に全貌が見える


〔私はリーダーのブレインと申します。傍観し、感じ、考え、命令し、実行させる、

がモットーですので以後お見知りおきを〕


ふざけた格好だ

黒いローブはまだしも、顔に着けているお面が夏祭りの屋台で売っているレベルの…

いや、アンコマンに仮面グライダー、タヌエモンとプリジュアッ!………

レベルのではなく、それそのものだ


〔さてさて、今回はメンバー紹介とその他くらいで終わらせようと思いますよ〕


声は低いが、たぶん若者だろう

口調や雰囲気で何となくだが20代前半あたりだろうか


〔まずこの身長が高いだけで、とても不健康そうな者がハンズ〕

〔こっちの大柄で筋肉質なやつがレッグ〕

〔そこのキモオタがテイル〕

〔それでこのたくさんケーブルが伸びてる物体がコア、こいつは私たちが創った人工知能だ。あまりなめないほうがいいともうよ警察政府諸君。〕

〔この四人と一機で幹部は構成されてるが…まあいいだろう〕


人工知能と言ってもどうせ大学のレベルにも届いていないだろうに…


〔では幹部の紹介も終わったことですし、本題に入ろうかな。〕

〔私たちの目的はただ一つ………この社会体制の転覆だ〕

〔まずは私たちの本気度を見てもらうとするよ。第一段階といったところかね。まずは都内にある第七囚人監修所を爆破する〕

〔これを防ぐにはこの動画がアップロードされてから三時間以内に、政府が何かしらの改変姿勢をとるしか方法はない。私たちの目的に本来は「人殺し」は含まれていないのでね〕

〔10時の時点で政府から発表がない場合。我々に有益な発表でなかった場合。国民の命は保証しかねるよ〕

〔私たちに本気度アピールをさせないでほしい。期待しているよ。無能ども。〕


プチン


「10時ってAMかな?」

『そーなんじゃねーかー?』

「でもさ、10時ってあと数分だよね」

『そうなんじゃねーか?』

「それに第七囚人監修所ってさ、フェンスに囲まれたバカでかい建物だよね」

『そう聞いてるが?』

「道路挟んで目の前にある建物ってさ。フェンスで囲まれててここらじゃ一番大きいじゃん?」

『それがどうかしたか?』

「政府は何か発表したの?」


――テロリズムには屈しない。第七はわが国でも有数のセキュリティを誇ります。

先日逮捕したテロリストの収監場所でもあるので、さらに万全の警備体制を敷いていますので近隣の住民の方もどうかご心配をなさらずに――

『だそうだ』


「岡中……10時まであと何分だ?」

『10秒前』


沈黙


「……」

『……』


『「走るぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」』


『念のためだからな!念のためぇぇぇぇぇ』

「一応だよなぁぁ。もしもってことがあるしぃぃぃ」


直後、高層地下25階、地上70階立てのビルが倒壊した

倒壊してきた

こちら側に


「やばっ…俺死んd」


ゴシャァ


「……」

「あれれ……死んでないじゃん」

「ああそうか、運よく倒れてきたビルの窓が開いていたんだ」

「そうと決まればさっさとここを出ないと」

「岡中は……」

「下半身がつぶされてるな…これは助からないな」


(箱の中で骨付き肉をシャッフルしたみたいになってるな…ひどい光景だ)


「よし、崩れるかもしれないしさっさと出るか」


窓だった地面を進み砕けた元壁の間を進む


「やっと出られた、なんなんだこの疲労感は…」


〈生存者だ!歩いているぞ!もう大丈夫ですよ。〉


「??なんであのひと口パクなんだ?…おっと…あれ、意識が…うすr」


レスキュー隊員が何か叫んでるような、そんな夢を見た気がした


「うう」

「あれ…」


(ビルが倒れてきて…よし記憶ははっきりしている)


[あっ、目が覚めましたか?]

[   目が覚めましたか?]

[あっ、    ましたか?]

[あっ、目が覚め    ?]

[あっ、目が覚めましたか?]


「はっ!?嘘だろ?なんだ…これ」

(看護師さんの声が…)


[どうなされましたか?どこか痛みますか?]

[    れましたか?どこか痛みますか?]

[どうなさ      どこか痛みますか?]

[どうなされましたか?どこか     ?]

[どうなされましたか?どこか痛みますか?]



「あの、言葉が…たぶん頭を打って…その、えと耳が」

(あー!!まとまらない!なんて説明すれば!)


[頭が悪いだなんて、元気そうですね。先生を呼んできますね]

[      んて、元気そうですね。先生を呼んできますね]

[頭が悪いだな     そうですね。先生を呼んできますね]

[頭が悪いだなんて、元気そうで      呼んできますね]

[頭が悪いだなんて、元気そうですね。先生を呼んできますね]


「あーちょっ…」

(なんだよこれ。意味が分からねぇ。そもそも何日だ?どれくらい寝てたんだ?

カレンダーとかないのかよ………おっ  ずいぶんカラフルなカレンダーだな、みどりのやつが持ってきたのかな?)


外からは頭の悪そうな音楽が流れてくる


(騒がしいな。近くに病院あるんだからもうちょっと気を使えよ。-うわなんか変な味がしてきた…薬品だろうか?寝てる間にいろいろされたのだろう。仕方がない。)


 その後先生がやってきていろいろ説明を聞いたが言葉の認識が追い付かず何を言っているのかよくわからなかった。この症状のことを先生に告げようとしたが、説明に至る言葉がなかったため、「事故後で混乱している」と片づけられたのだ。

その後も症状は続いたが、きっと慣れたのであろう。数日で普通の生活に戻った。


―――――これが一週間前までの僕


「さて。第三段階に駒をすすめよう。次は各国の大使館の消滅だ」

「爆破ではなく、消してしまおうか」

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〔V.O.I.D〕 ぽてかわいもた @poteimo

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