終戦から15年、現代日本の原風景のような、
知らないのに懐かしい昭和半ばの焼津にて、
夢中になって桜の絵を描いていた「私」は、
その日、初めて、シャッターを切る安部先輩の存在に気が付いた。
まもなく東京に行く安部先輩が語る将来像、
なぜ買い食いか美味しいのかをテーマとするコロッケ演説、
絵を描くことが好きだからこそ嫌になった日、
そのとき先生が語ってくれたこと。
写実的でありながら優しく瑞々しいタッチで、
絵描きに憧れる少女の桜の季節が描かれる。
爽やかで、少し切ない読後感がすごく好き。
絵を描くことについて語る先生の言葉に、
私もひたむきに創作に取り組みたいと、
思いを新たにさせてもらいました。