これは、少女が「音楽」に出会うまでの物語

(幼年編完結時点でのレビューです)
幼年編では主人公・黎元美鍵が様々な人間と出会い、その優しさや厳しさ、そして時にその人たちの「音楽」に触れることで、自分自身もまた「音楽」へと誘われていきます。

一文一文から漏れだす登場人物たちの情念が、まるでこちらにまで迫ってくるかのような力強さを孕んだ文章。しかしそんな力強さとは正反対にそこに描かれるのは、触れれば壊れてしまいそうなほどに危うく、儚く、そして優しい世界。そんなこの作品に心底惚れ込ませられました。

特にその力強さの象徴ともいえるのはⅢ・Ⅳ話での演奏シーンです。対比によって描かれる二つの演奏は、まるでその場の音楽がこちらにまで伝わって来るような錯覚を覚えました。

現在の幸福に満ちた音楽を奏でるまでに、一体彼女たちにどんな軌跡があったのか。期待と、そして少しの不安を基に読み進めれば、きっとあなたもこの物語の虜になることでしょう。

このレビューの作品

コンチェルト

その他のおすすめレビュー

大村あたるさんの他のおすすめレビュー36