味わい深い小品

短い小説ですのであまり感想を書きすぎると味わいが損なわれるのですが、淘汰され追いやられた人びとが、互いへのやさしさとか思いやりを失っていないところがとてもよい。
いや、やさしさとか思いやりがあるがゆえに淘汰された、と捉えることもできるのですが。
かれらの進む世界に救いはあるのか。光はあるのか。
もしかしたら、そのやさしさが光なのかもしれない。
淘汰され棲む世界を追われても、それでも生き続けようとするひとにぎりの強さが、燈火なのかもしれない。

いろいろ暗示的な物語です。深読みがいくらでもできる。
読者の数だけ、感想が湧く。
ファンタジーというジャンルの真骨頂でしょう。
短い物語ですけど、これを基盤にもう少し練ることもできる余地もありそうで。
よかったです。とても。