百円の剣で世界を征服する

@hakutos

一話 《百円の剣を手に入れた!》

2020年現在、この世界は8分6を多種多様な魔物に侵略されていた、この現状をある者は、ファンタジーのようで燃えると言い剣を手に挑んだ、又ある者はもう世界は終わりだと嘆き、さらに勉学に励んだ。

高校生や大学生は英雄の称号を求めて立ち向かっていくが、たった一握りの人間を除いて、勝ち目など無いと言う現実を知らしめられた。

まだ、アメリカ・ロシア・日本は、政府もまだ残っていて安全な土地が生き延びており、この国を『安地』と呼んでいる者が多くいる。

そしてこの三国はもう既に合併しており、現在は勇者、いや、勇者とは過大表現だろう、正確には、勇者と言う名の高校生が一番多い日本の言葉で統一されている。

自分はアメリカの人間ではあるが、産まれも育ちも日本である、ただの『勇者志望の』日本人である________


_______________________________________2020年,4月

「予想外だ」

俺、『グラス・スラッグ』は、路上のブルーシートの上で凍えていた。何故かって?

「まさか見捨てられるとは......」

昨日父親に思い切って、『勇者になりたい』と暴露したところ、目が覚めたらロシアの最前線まで郵送されていたのだ、まさに絶望である。

「あのクソジジィ.....せめて金も送ってくれよ.....」

いきなり寝てる間に送られたので、財布なんて持ってきていない。

寝る前にコンビニに行った際にポケットに入れておいたお釣りの250円しか無い、これはどうにかなるのだろうか?いや、ならねぇわ。誰かお金貸してください。

そんな事を考えつつも膝を思いっきり曲げ跳躍する様に立ち上がった。

そしてRPGの大定番、初めになすべき事、それは、準備を整える事である。確かさっき闇市を見たはずである、あまりよろしくは無いが、こんな崩壊した状況なので、政府も黙認している。

「しゃあねぇせめて武器をなんか買わねぇとなぁ」

ポケットに手を入れ、硬貨をちゃりちゃり鳴らしながら、闇市の方に足を向けた。

______________________________________2020年,4月,19時

「日本円じゃねぇかぁっ!!」

なけなしの250円を地面に叩きつけると、小気味いいちゃきんと言った金属音が響いた。

「そうだよね!使えないよね!?だってここロシアだもん!!」

周りの痛い視線など気にならない。何故ならもっと痛い事態が起こっているからである。ロシアの通貨なんて持ってません!だって日本人ですもの。笑えねぇわ!!

通貨交換システムなんて知っちゃこったねぇ、ここは銀行なんて一つも無い殆ど悪魔の世界の境界線なのだから。

「目の前に雑な扱いを受けてる武器がこんなにあるのに....」

箱に無理やり詰められしなってしまっているものや、馬に踏まれ砕けているものさえある。さらに、眼前に並んでいる武器の値段を日本円換算すれば全て100円未満である。だが全てロシアの通貨である。

「どうすっかなぁ...」

道の端に腰を下ろし、吐き捨てる様に呟く。だけども、こんな闇市じゃ助けを差し伸べてくれる人間なんていない。

「もう日も暮れてきたし帰るか....」

しょうが無いので元いたブルーシートの場所に戻ろうと思いながらもう一度闇市をぐるっと一周する。するともう一本さっき見落としていた路地があるのに気づく、もう希望など持ってはいないが一応中を見回ってみる。

「ん.....?」

周りに比べて一際ぞんざいな扱いを受けている剣が視界の端に入った。そんな剣でも何故か俺には、金色に輝いて見えた。

「こんな剣でも持てればなぁ....」

そう思いながら両刃の剣を鞘から抜いて一周ぐるっと見回してふと気づく。

「値札はどこだ?」

そう思ってもう一度見回す。結構刀身は長く回すだけでも腕が軋む。

「やっぱ、値札貼ってねぇな....」

「それは廃棄するものだからタダで譲るよ....」

「おぅっ!!」

いきなり話しかけられたので驚いてしまった、店主が壁に同化していて気づかなかった。植物性の人間なのだろうか?←パニクっている。

すっかり荒くなってしまった呼吸を整えつつ店主に話しかける。

「なら貰いたいとこだけどなんか申し訳ねぇしなぁ....」

金はあるにはあるが使えない、そんな中無償で、使える物を、貰うのは気が引ける。

「じゃあ日本円で100円でも良いよ....」

意外な言葉に驚いてしまった、まさかこの100円玉が使えるとは。

明らかに頬が緩むがそんな事は気にせず、ポケットからガサツに100円玉を取り出し店主に渡して剣を拾い上げた。

「有難く頂くとします」

「いきなり態度変わったな.....」

店主がなんか言ってるけど気にせず、鞘から抜いてみると、案外業物に見えないことも無い。

「まぁ、素人が見てもわからんがな」

笑って帰ろうとしている時後ろの店主も歯切れ悪い様に笑った気がした。

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