とらっく・いず・ご〜いんぐ
Jack-indoorwolf
第1話
「世界はクソったれだが俺はそれを楽しむ術を知っている」
ドライバーが運転しながらそう笑った。
私は先ほどこの男をフッたばかりだ。しかし彼の表情は明るい。助手席にいる私は静かにため息をついた。
「俺はしばらく旅に出る」
「現地で安酒に酔い見知らぬ女たちと遊ぶ」
「そして何もかも忘れて再スタートだ」
ドライバーがポツリポツリと言った。
深い緑に囲まれた暗い山道を彼が軽トラで私の家へ送ってくれている。頼りない街灯の数は住民の少なさを想像させるのに難しくない。軽トラはエンジン音がとてもうるさく狭い車内はガソリンと土の香りがした。人生いろいろだ。私は業界とベッドインしたような彼氏の元へ帰らねばならない。それが私の選んだ道だ。
しばらく沈黙が続いたあとドライバーは突然独り言のように鼻で笑った。
その後私たちは学生時代の昔話に夢中になった。
私と彼氏が住むマンションは豪邸が建ち並ぶ住宅街にある。先ほどの山奥とはお金のかかり方が違う風景。自宅に到着するともう夜は明けていた。私がシートベルトを外す。するとドライバーの左手が私の顔前に伸びた。パチンと鳴る指。直後彼の手中から薔薇の花が飛び出した。驚く私。敗北者がニンマリ笑う。
遠くへ消えていく軽トラを見送りながら私は舌打ちをした。
その軽トラのドライバーとは二度と会うことがなかった。
とらっく・いず・ご〜いんぐ Jack-indoorwolf @jun-diabolo-13
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