『浸食腐海 之 夢』
宇宙から来た菌に侵略される、3人称の夢であった。
主人公達は着々と侵略を進めていく菌に対抗すべく、侵略者に関するある重要なデータを政府の情報機関から見せて貰うこととなる。
多くのディスプレイと機械がひしめく秘密基地に、主人公とその仲間達がそろった。そして、データを画面に映し出される。
その瞬間、ケタタマシい音がが鳴り響いた。部屋の四隅に設置された警報機が光って回り、室内を赤く染め上げる。敵の襲撃であった。
もともと隠すことに徹していたこの場所は防御が薄く、侵入した敵がこの部屋にたどり着くのも時間の問題だった。
どうして、ここの場所がバレたのか。室内の誰もが疑問に思うが、その答えを持っている人物はいなかった。
なにはともあれ、このデータだけはなんとしても守り抜かねばならない。主人公達はとりあえず全員散った後、リレー方式でデータが入った記憶媒体を運んでいくことを決定する。
ひとり、またひとりと記憶媒体が仲間の手を渡っていく。その中で記憶媒体を手にした仲間は傷つき、また命を落とす者もいた。
少なくない犠牲を出しながらも記憶媒体は徐々に目的に近づいていく。そして、ついに記憶媒体を持った仲間が、官僚の一人のもとにたどり着いた。
ボロボロになった仲間が差し出した記憶媒体を背広をきた小太りの重役が受け取る。
そして、それをまじまじと見た後に
「ご苦労だったね」
と、仲間に声をかけた。
次の瞬間、重役の頭部がクリオネ式に開き、仲間の頭部を食いちぎった。
世界は樹海へと沈んだ。
実質的に宇宙からの菌の勝利となってから、少しの時間が経った。その少しの時間で世界は劇的に変わっていった。
地球の地面は苔や菌糸に覆われてフワフワとし、人々は靴を履く必要がなくなった。また、気候も地球全体が温暖な気候へと変化していき、防寒の必要がなくなり服を着る必要もなくなった。
そして、服も靴も身につける必要がなくなった人類は菌に感染したことによって、形を崩していった。
全体的に少しずつ、その姿を柔らかくしていった人々は、ゆったりとしたローブのようなものを好むようになっていった。ズボンやシャツなどの以前の服は急速に廃れていき、来て着ている者を滅多に見ることはほとんどなくなった。
それでも、その服をあえて着る者達もいた。
防寒や傷からの保護などの用途がなくなった服には新たな役割があった。それは、菌の感染により柔らかくなった身体の形状維持だ。
遙か昔、人の体に合わせて作られた衣服。菌に支配された今現在の世界では衣服に人の体が合わせるようになったのだ。
その滅多に見ることがなくなった服を着て樹海を走るひとりの男性がいた。人気のない腐海を跳ぶ様に走っている。その速度や跳躍力は、もはや人の域を越えていた。
菌に感染したことにより人体の運動能力は飛躍的に上昇し、視力の劇的回復なども起こっていた。重役達が菌に下った経緯にはどうやらこの事実も一枚かんでいるらしい。
男は苔や菌糸に覆われた大木の横を跳び抜けて、ある場所へと向かっていた。彼は記憶媒体を運んだメンバーの一人であった。
やがて、男はある場所へとたどり着く。そこはあの時、開始地点となった秘密基地だった。しかしそこも苔や菌糸、名も分からぬ植物達に覆われ、機械達は動く様子を全く見せず、天井は壊れて無いも等しい形となっている。
この場所は山の中腹内部であったにも関わらず、だ。
技術力に差がありすぎたのだろう。おそらく、前の戦に関して言えば戦う前から勝敗は決していたのだ。
そこにいたのは以前、記憶媒体を運んだメンバー達だった。全員が揃っているわけではないが、ほとんどのメンバーがそこには集まっていた。
彼らはレジスタンス。この菌に支配された地球を取り戻そうと、道半ばで倒れた仲間達の仇を討とうと、再び立ち上がった者達だった。
一番最後に到着した、精悍な顔つきをした青年が全員を見回して、頷く。それを応じるかのように、皆が強い意志を宿した目で、頷いた。
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ここで、終了。目が覚めました。
頑張れれば次の更新は7月上旬です。
夢の話 天晶 @tensyou
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