夢の話
天晶
『行先何処 之 夢』
自分は薄暗い、地下鉄の駅にいた。
ホーム上には自分以外に誰もおらず、閑散とした雰囲気を漂わせていた。2つの線路に挟まれた駅で、自分は片方の線路を見ていた。ホームドアなどはなく、壁や天井に付けられている電灯もおそらくLEDではなく白熱灯だろう。線路の行く先は真っ暗で、奥には灯り一つ見ることが出来なかった。
ああ、この先は滅びているんだなと、自分は直感的にそう思う。
しばらく間、そのままボンヤリと線路を眺めていると不意に、電車がやって来た。この電車に乗るのか思い、自分は来た電車に大して考えもせずに乗り込んだ。すぐに扉が閉まり、動き出した電車は真っ暗い方へと行かなかった。むしろ遠ざかっていった。扉の前で首を傾げていると、どこからかクスクスという小さな笑い声がした。
笑い声のした方を見ると聡明そうな男性が一人、3人席に足を組んで座っていた。纏っている知的な雰囲気に反するように、外見は若い。30代までいってないだろう。
「――――」
男性が一言二言、自分に楽しげに話しかけてくる。自分はその内容は覚えていない。大した内容ではなく、無視しても良かった内容ではあったような気がする。が、自分を不快にさせる内容ではあったことは確実で、自分はその内容に眉をひそめ、唇を引き結ぶ。
揺れる車内に他に乗客はおらず、返事をせずに別の車両に移動しても良かった。
「――」
しかし、自分は目を細め不快さを如実に表した声で、それを肯定するような内容を男に返す。男性との間にある数歩の距離を一気に縮め、殴ろうかとも思った。が、息小さく吐いて、我慢する。
そして、笑みを崩さぬ男性に背を向けて車両の中を歩き出した。
場面は唐突に変わり、枯れ草が一面に揺れる草原に自分は立っていた。高さが一メートルほどの枯れ草は、柔らかな風が吹く度に波打つようにその身を揺らし、空は青く澄んでいて秋晴れといった言葉ふさわしい空であった。
ふと横を見ると、肉食の恐竜を更に大きくして4足歩行にしたうえに前足と胴体の間に皮膜をつけて飛べるようにしたようなモンスターが、咆哮を上げていた。びりびりと空気が振動するのを肌で感じる。
武器も防具も無い今の状態じゃ、ちょっと勝つのは難しそうだな。と目の前にいる自身よりも遙かに大きなモンスターを見上げながら、自分はそう判断すると、モンスターに背を向けて走り出す。
当然のごとく、モンスターは自分を追ってきた。地面に爪を立て、2足歩行では絶対に出し得ない4足歩行特有の猛スピードで枯れ草の中を突進してくる。
しばらくモンスターに草原の中を追いかけられていると、ヒトが2人立っているのを見つける。その2人は自身らの背丈よりも高い棒を持った、僧のような出で立ちをしており、顔を生成の布で隠していた。
自分は迷うことなくその2人の間を走り抜ける。と、いきなり小さな村へと移動した。
栄えている、というにはほど遠い小さな村であった。村の周りは村の規模からすれば不釣り合いにも見える高い壁で囲まれ、村の中には槍のような武器を持った人が数多く歩いていた。壁の上には先を尖らせた丸太が何本も縛り付けられており、村全体にどこか物々しい雰囲気が漂っている。
瞬間転移、というよりは結界に近い感じだろうか? そんなことを思いながら自分は少し上がっていた息を整える。少しして自分は門を一瞬振り返ってから村の奥へと進めた。先ほどのモンスターはどうにかなったようだ。
村のある建物の前に、誰かが一人立っている。初老というには若く、中年というには年がいった男性で、長弓を背に担いでいた。彼はこの村の長であった。
彼の話によると自分は以前、この村を訪ねたことがあるらしい。ここは本来、特殊な結界により守られた隠れ里であるらしいのだが、そういった理由があって自分はすんなりとこの村へと入ることが出来たようだ。
ここは狩人の隠れ里。そして、この村はある危機に瀕していた。
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ここで終了。目が覚めました。
真っ暗な先を見てみたかったとも思いますが、見たらこちらに戻ってこれる可能性が格段に下がりそうな夢でしたね。
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