事件の真相
大丈夫。私はこれくらいじゃ動じない。冷静に質問する。
「え、え、え、死んでたんじゃ、え、無いんですっかっ!?」
ごめんちょっと嘘ついた。冷静とはかけ離れた状態でした。
「いや、死ぬとか無いので。不死身なので。どうも、不死身の伏見です。」
「なんだこいつケロッとしやがって。」
「芦洲君。口に出てるよ。」
「あ、いいんですいいんです。悪いの私ですから。皆さんこの度はご迷惑をおかけしてすいませんでした。」
血だらけの伏見は続ける。
「いやね、私、ホモサピエンス誕生頃から生きてるんで、もう死にたくて死にたくて堪らん訳ですよ。でも死ねない。だから社会的にだけでも死んだことにして貰おうかなぁー……なんて思ってみたりしてみちゃって。」
可哀想ではあるが、傍迷惑この上ない。
とりあえず疑問をぶつけておく。
「え、ホントに不死身なんですか?」
「あ、はい。なんなら。」
そう言って、マッド経済学者・比江からナイフを奪い取る。
「オイ、ナニスンダ!」
ぐさり。自分の首元にナイフを突き刺す。
「うええええええ、グロオオオオオ!」
「あ、本人はなんともないので。はい。」
首にナイフをぶっ刺したまま話している。どうやってんだそれ。声帯とか大丈夫か。
「ほっときゃ治ります。頑張ればすぐ治りますよ。死にませんし痛くもありません。」
そういって凶器を引き抜き、ふんっと力を入れる。すると、傷口がみるみる塞がってゆき、完治してしまった。
先生が、パンッと手を叩く。
「はい、お疲れ様でしたー。真相は、『そもそも被害者が不死身で、自殺しようとしてた』でしたー。」
「先生。今まで我慢してましたが……それでいいんですか!?!?!?」
「ん?何がだい?」
「そんな!推理で!いいんですかって!言ってるんです!!」
「全ての可能性を考えて、消去法で考えて行った結果、どうしても自殺でなければならなかった。で、自殺する為には不死身でなければならなかった。なにかご不満でも?」
「……だって、不死身の人間がいるとは限らなかったじゃないですか。」
「いないとも限らなかっただろう?」
「…………」
なんか、負けた気がする。なんかこう、悔しい。
「はい、みなさんお開きお開きー。疑って悪かったですねごめんなさいねー。」
「ところでなんだが栗竹君。」
先生が鑑識の人に話しかけに行っている。
「あの不死身の伏見さんはどうする気だい?自殺未遂ってことにするのかな?」
「いや、あの人戸籍とかないんで手続きとか凄いややこしいんですよねー。どうしよっかな。」
「それならな、ウチに置かせてくれないか。」
え、ええええええ。
「なるほど。処理もしなくていいし、草辺さんは助手が増えると。伏見さんが良ければいいんじゃないですか?」
いいのかよ、お前警察だろ?
「ってな訳だが、どうする?伏見君。」
「あ、ぜひともよろしくお願いしたいです。」
「よし、決定だ。」
そんなのいいのか……??
どうやら、草辺探偵事務所はこれからどんどん忙しくなりそうです……
彼の推理は、考え過ぎてる。 いましん @zunomashi
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