第2話 夢の扉
「おはよー」
美咲は階段を下りていきリビングの扉を開きながらダイニングテーブルで朝食を食べる父親とキッチンで朝ごはんとお弁当を作っている母親に朝の挨拶をした。
「おはよう。美咲、お誕生日おめでとう」
朝食のトーストを齧っていた父が美咲に笑って挨拶と一緒にお祝いの言葉を添えてきて美咲はどうでもいいように頷いた。
「おはよう美咲。今日は夕飯、美咲の好きなお店を予約してるわよ。ケーキも注文してるからね」
ウフフと嬉しそうに笑う母親に美咲はハイハイと手を振ってリビングを抜けた場所にある洗面所へ向かった。
美咲の両親はなかなか子供が授からずにいた為、やっと授かった美咲に甘かった。
いつも優しい笑顔の父と母、そして自分の三人家族だ。
父は上場企業の専務で母は専業主婦。
ぶっちゃけ金持ちです。
「何買ってもらお〜」
誕生日な事もあり自分がおねだりしたものは余程のもので無い限り買ってもらえる事を分かっている美咲は洗面所で歯磨きしながら欲しいものを考えた。
三月の早生まれの美咲はもうすぐ高校二年生になる。今日は三年生を送る卒業式の予行練習で帰宅時間も午前でいつもより早かったりする。
なので、母を引っ張りだして買い物に行こうと美咲の心は浮き足立った。
顔と歯を磨き、別に塗らなくても良いキメの細かい白肌にファンデーションを軽く塗る。そして、ピンクの頬紅とリップをした。二重の大きな瞳はそのまま触らず、元々まつ毛もクルリと上がっているのでビューラーもしない。色素の薄い栗色の天パのゆるふわの髪も手ぐしでササッと撫で付けると美咲はリビングに戻る。
既に朝食が出来上がっていて美咲の席にトーストにサラダ、ベーコンと目玉焼きにコーンスープとフルーツヨーグルトが並べられていた。
「いただきまーす」
椅子に座ると美咲は手と手を合わせ、お箸を持った。
「お母さん、今日午後暇?」
「ええ。空いてるわよ」
「やったぁ〜。私、欲しいアクセがあるんだけどそれ見に行きたい」
大好きな有名ブランドでそこそこの値が張るのだがダメ元で強請ってみようと美咲は考えた。
「いいわよ。じゃあ、学校終わったらそのまま行きましょ?学校まで迎えに行くから。それで夜はパパと合流してご飯食べに行きましょう」
ニッコリ笑う母親に美咲はやったーっと手を叩いて喜んだ。
その様子を見て父親も頷く。
「ほらほら、早く食べなさい。時間なくなるわよ」
食べる事を急かされて美咲は時計を見ると家を出るのに後、十五分しかなくて焦りながらトーストを齧った。
夢の扉が開いたら 美月 @mizuki_kanan
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