……2
芹澤「はい、号令」
ぼんやりとソメイヨシノの木を眺めていると聞きなれた声が聞こえてくる。
後ろの黒板を見ると三時間目は芹澤先生の理科だった。
芹澤「じゃあとりあえず今日は自己紹介してもらおうかな」
出ました先生たちお得意の自己紹介。
実を言うと自己紹介ほど嫌いなものはない。
改めて自分の名前や好きなものをみんなの前で発表するとなるとどこか照れくさいのはわかる人も少なくないだろう。
知里「近藤知里ですっ、えーっと好きな食べ物は〜。んー?いちごとさくらんぼですっ!よろしくお願いしまぁす」
ましてやちいみたいにかわいくブリブリして自己紹介ができればかえってすがすがしい。
あんな風に自分をアピールできたらさぞ人生苦労は減るだろうに。
芹澤「はい、よろしく。じゃあ次」
とうとう私の番がきてしまった。
瑠璃「浅野瑠璃です。好きな食べ物は………………もんじゃ焼きとバナナです。よろしくお願いします」
どもらなかったのはいいとして、可愛さの欠片もない自己紹介だ。
好きな食べ物となると自己紹介のときは出てこないものだ。
普段はアレが食べたいコレが好きなんて思うのに改めて聞かれるとなにが好きなのかわからなくなる。
嘘でもイチゴとわたあめとでも言っておけば正解だったのだろうか。
芹澤「はーい、じゃ、全員終わったね。名前覚えるのにはだいぶかかると思うけどまあ頑張ります。それとあんまり気抜いてうかうかすんなよ〜!5月の18日からは中間試験だから勉強ちゃんとしとけよ!」
''中間試験''
そのワードすら忘れていた。
理科といえば毎回赤点を免れない教科で私の1番の苦手教科だ。
文系は人並み以上にできるかわりに理数系だけはどうしても体が受け付けていない。だいたい理数というものは……
芹澤「おい、浅野。ぼーっとするな」
はっと意識を取り戻すと目の前に芹澤先生の顔面どアップ。
くわっと目を見開いて私はうつむいた。
思ったより綺麗な顔つきじゃなかったけど、芹澤先生は私のツボをいちいち押してくるような人物ではある。
芹澤「自習。」
瑠璃「……へ?」
芹澤「しなさい。」
ふと黒板に目を向けると残りの時間は自習と書かれていた。
瑠璃「……ごめんなさい」
芹澤「わかんないの?」
瑠璃「まあわりと」
芹澤「放課後なら空いてるから。放課後空いてる日俺のとこ来て。そのかわり補習じゃなくておまえの質問に答えるだけね」
すごく嬉しかったのはもう既に先生に恋焦がれていたからなのかもしれない。
それでも恋でした ぴーちてぃー @nnHappiness
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