第22話

 「逸れないね。」


 「ああ、そうだな。今までこれほどユピテルに近づくことはなかったんだがな。」


 イカロスは真っすぐにユピテルに向かっていました。


 「ねえ、これからどうなるの?」


 鉄は氷に向かって尋ねました。


 「どうなるのかですって?それがどうして私に分かるというの?」


 氷は怒ったような口調で言いました。


 「あなたはヘリオスに行きたいって言ってたわね。このままユピテルにぶつかるとそれは叶わないわ。いっそユピテルの一員になるのはどう?それともユピテルの傍をかすめて、、、。」


 そう言うと今度は急におびえたようになって、氷は口をつぐみました。


 イカロスは速度を増していきました。ユピテルの重力に引かれているのです。ユピテルはコリエを砕いているのと同じ力でイカロスを自分の方に引き寄せているのでした。

 イカロスはどんどん速度を上げ、もはやユピテルは目の前に迫っていました。

 それは鉄が見たこともない巨大な星でした。


 ユピテルの表面は渦巻くガスの分厚い雲に覆われていました。その雲のひだのひとつひとつは猛烈に吹き荒れる嵐なのです。


 ユピテルを眺めるイカロスの前をコリエが横切りました。間近で見るコリエは、子星といいながらも大きな星でした。イカロスの何千倍もの大きさがあるように見えました。


 コリエはユピテルの重力につぶされ、表面には無数の裂け目が走り、そこから絶え間なく岩石を噴き出していました。コリエの破片は互いに激しくぶつかりながら、あるものはユピテルの周りを回り、あるものはユピテルに落ちていきました。たくさんの岩が火を噴き、煙を引きながら絶え間なくユピテルの雲の中に降り注いでいました。


 そして、イカロスにも徐々に変化が表れてきました。鉄は自分の体が軽くなったように感じました。イカロスに着いて以来、鉄はイカロスに引っ張られる感じ、つまり重さを感じていましたが、今それが小さくなっているのです。ユピテルの力が及んできた証拠でした。

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鉄のたびするところ @chatte-sachi

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