どこかにいるはずの「アリス」を捜せ!
突然異空間に閉じ込められた高校生男女は、「アリス」を捜すゲームに強制参加させられることになった。
もとの世界へ帰るためには「アリス」を見つけ出さなければならない。
わけもわからぬまま、彼らは一緒に、あるいはバラバラに別れながら、どこか見覚えのある世界をいくつも彷徨い渡り歩くことになる――
彼らが目にするのは、覚えのある過去の光景。あるいは、どこかが過去とは違う世界。
登場人物それぞれの過去、取り巻く環境、その時々の感情。
それらが一気に押し寄せて、これでもかというくらいにキャラクターの生きた証・生きる姿を浮き彫りにしていきます。
葵。泰介。要平。
何度彼らの心の奥に踏み込み、何度彼らとともに感情を動かされたことか。
約42万字もの文量がありながら、登場人物の数が絞られているため、ひとりひとりに対する没入感が半端なく凄いのです。今も、彼らの名前を見るだけで胸が熱くなります。
彼らの過去の後悔、未来への可能性。物語のいくつものピースが複雑に絡み合ったり解れたりを繰り返しながら、彼らの進む道を、決断を前に進めさせてくれます。
時に熱く、時に脆く。どこまでもエネルギッシュかつ繊細な、思春期の感情がほとばしります。
精いっぱいに戦いながら、いくつもの時を駆け抜けた少年少女たちの熱き冒険譚。
共に駆けながら、じっくりと。この深い感動を味わってみませんか。
学校からの呼び出しを受けて登校してきた3人の高校生。しかし彼ら以外には誰も登校している生徒はいない。3人は不審におもって学校内を捜索するが、そのうちに1人が行方不明になってしまう。混乱する2人の前に謎の少女が現れ、告げる。
「この中にアリスがいる。アリスを見つけださない限り、この世界から脱出できないー。」
過去と現在が交錯する中で展開する物語。それぞれの視点が折り合う中で少しずつ明らかになる登場人物の過去と、それに伴って進展していく彼らの関係。見所は多く、自然と話に引き込まれます。非常に力を入れて描かれたことがわかる秀作です。
三人の高校生たちがその内容も目的も「アリス」の正体もわからないゲームに巻き込まれる、という作品。読み始めてから文字数の多さに気づき、もしかしたら途中で読むのをやめるかもしれないと思ったのですが、続きが気になって読むのをやめられず結局最後まで読まされてしまいました。面白かったです。キャラクターの造形や心理描写がうまく、思春期の心の痛みや葛藤が伝わってきました。特に仁科くんがお気に入りのキャラです。侑の出会いの辺りがすごくドラマチックで。それから風景や情景の描写も情感たっぷりで、リアルな教室の風景がありありと心に浮かび胸が苦しくなりました。一つ一つパズルのピースがはまっていき、真相が明らかになるような構成もなるほどという感じです。もっと多くの方に読まれてほしい作品!
どこまでもまっすぐな少年ととても純粋な少女、そしてなにかをあきらめた少年。死んだはずの少女の宣言で始まる「ゲーム」が、彼らを思いもよらぬ未来へとみちびきます。
複雑にもつれた糸がほどかれるにしたがって二転三転する物語に、あかされる真実に、心を揺さぶられながら、誰かのために何かをする、ということの意味を、登場人物たちを通じてさまざまな角度から体験することができました。
硬質な文章と緻密な描写をあじわっているうちに、登場人物ひとりひとりの視線から、「ゲーム」に参加しているような気分になります。
青春ものやミステリーがすきな方は是非ともご覧くださいませ。
謎だらけの「ゲーム」に誘い込まれた、3人の高校生。
誰が巻き込み、誰が巻き込まれたのか。
彼らを翻弄する「仕掛け人」の、真の思惑は。
そして、彼らが探せと命じられた「アリス」とはいったい何者なのか――
断片的に甦る彼らの記憶のピースには、誰もがどこかで覚えがあるだろう光景が散りばめられていて、それをつなぎ合わせて真実に迫ろうとしているのは彼らであるはずなのに、いつの間にかこちらまで「ゲーム」に参加しているような心地になってきます。
タイムリープものというジャンル自体は決して目新しいものではありませんが、世間に林立するその系統の作品とは一線を画したものにしようという作者様の思いが伝わってくるような仕上がりになっていると感じます。
約42万字というボリューミーな作品ですが、正統派ジュヴナイルのお好きな方なら、あっという間に読めてしまうはず。
ぜひ、ご一読を。