5
真弓は放課後の教室で、鞄から取り出したスマートフォンで時刻を確認する。
一日と一時間半巻き戻っている。過去へ戻ってきたのだ。
さて何をするかなどと悩む必要などなかった。やろうとしていたことをこの時間軸でやるだけだ。
真弓がキューブを発見したのはコンビニへ向かう途中だった。
帰り道、コンビニで行われるキャラクターくじの開始日だったと思い出し道を引き返したはいいが、急ぐあまりいつの間にか舗装されていない道に出ていた。鎮守の森の横手だった。
そこで光るものを発見し、もしやと思い雑木林に入りこんだのだった。
だから、あの時引けなかったくじを引くだけだ。とあるスポーツアニメのキャラクターグッズが貰えるくじだ。ハズレなしで必ずなんらかの景品がもらえるのだが、前回行われた時には一日として持たず全ての景品がなくなった。だから、今度こそはと思っていたのに発売日を忘れるなどという失態を犯してしまった。
これは自分に神様がくださったチャンスに違いないと真弓は確信する。
その日はまっすぐ帰り日付が変わるのを待った。
深夜、上着を羽織り、家を抜け出そうとした。
しかし、階段を降りる音で、父に見つかってしまった。父の説教がはじまり夜のうちにくじを引くという目論見は失敗に終わる。
早朝、眠い目をこすりながら着替えて学校の用意を持ってコンビニに行く。
店内は仕事前のサラリーマンや学生で混雑していた。景品が残っているのを確認し、客が途絶えた間隙にレジへ行き店員にくじを頼む。有り金全部つっこんだ。
ゆっくりとくじを引いている時間はなかった。すぐに自分の後ろに客が並び始めたので迷っている余裕はない。まとめて引いて、まとめてめくる。賞はばらけていたが、一番欲しかったA賞は当たらなかった。
真弓は気落ちしてコンビニを出る。これがもし普通にくじを引いただけであれば、これほど落胆はしなかっただろう。キューブを使用してまで獲得した景品がこのありさまなのか。そう思わずにはいられない。
景品はオークションにも出回るが、人気作品のA賞ともなると学生には手の出ない値段まで高騰する。
もう欲しくても入手できない。そう諦めかけたが、本当にそうなのだろうかと疑念を持つ。まだ諦めきれずにいた真弓は、一限目をサボり神社へと足を向けてみた。
そこにキューブはあった。
何度でも過去へ戻れるのだ。当たるまで何度もくじを引くことができる。
しかし、どうせ一日を繰り返せるのに、くじしかしないのももったいない気がした。やるのであれば他にも何か挑戦してみたい。
どうせ恵介が来るのは五時少し前だから、それまで時間はまだまだある。
真弓は高校へ行き授業を受けながら何をしようかと考えを巡らせる。
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