あの子の異世界行きを全力阻止！俺とへっぽこ女神の珍道中

第23話 鬼退治その後で

「田中さん、いえ、田中様！悪い人たちから助けていただきありがとうございます！」

助けた少女3人に取り囲まれた俺。未だ例の悪役スーツのままなので顔ばれの心配はないが名前は割れている。

割れている名前は偽名だが、ゆーみやえりに近しい存在の3人に正体がばれるのは時間の問題だろう。

「女神さん、記憶の改鋳ってやりなおし効くんですか？というか襲われた記憶も残っているみたいですけど」

映画なら催眠のかけ直しとか普通に出来てるよな。サングラスかけてフラッシュ炊くやつ。

「それが…先ほどから試しているのですが、記憶ではなく魂のほうに刻まれてしまったようで」

書き込み先が違うと？

「それってやっぱり女神さんが名前を連呼したせいで」

「い、いえ、違います！言いがかりです！先ほどの冥界鬼の発した瘴気に当てられ、彼女達の魂が疲弊したところに田中さんの強すぎる神気が浸透したためと」

つまりはなにか？

弱った三人の魂を修復する際に俺の神気がしみ込んだ際に名前も刻まれただと？

「こんなこと普通ならありえないのですが、彼女たちは田中さんの眷属に近いポジションになったようです。神力も見習い程度ですが持ち合わせています。ですから命令によってある程度行動を縛ることは可能かと」

事案だ！

少女3人が眷属とか。

「んー。ということで今夜あったことは他言無用ということで」

「はい！田中様のご命令どおりに！」

リーダーっぽい少女が元気よく答える。先ほどの弱ったオーラは完全に消え、今は薄い金色のオーラが噴き出ている。

やべえ。俺の色と一緒じゃん。

「ええと、そろそろ警察が到着するようなので神域解除しますね。三人は保護者が迎えに来るよう手を回してありますので、それまで田中さんよろしくお願いします」

丸投げだ。女神さんはチームを引き連れここから離れていく。

ぶぉん。と神域を作っていた膜が消えるとパトカー数台分のけたたましいサイレンが近づいてきた。

それと同時にコンビニの店内に店員の姿が。バックヤードにいたんだろうか。

「何か暖かい物でも買おうか…注文いいですか？」

店外の騒動に動揺している店員に何食わぬ顔で注文をする。

三人にはホットココア、自分はホットコーヒーを買い、保護者の到着をコンビニのイートインで待機することに。

ほどなく迎えに来た保護者達は大量に集まったパトカーと改造バイクに目を白黒させていたが、居合わせた警察官から自分たちの子供は巻き込まれていない、コンビニにいただけと知らされ安心して引き上げていった。

ちなみに暴走族の乱闘はコンビニからすこし外れた空き地で起こったことになっていたのでコンビニの営業には支障なし。

暴走族のリーダーの座をめぐっての大乱闘として処理された案件はけが人も出ず翌日の新聞にちょっぴり載る程度の騒ぎで幕を閉じた。

暴走族は全員身柄を拘束され、改鋳された記憶で聴取を受けている事だろう。

これを気にまっとうな人生を…無理か。

例のトサカ鬼が出てくる原因となっていたコンビニ駐車場のほころびは俺の神力でぴったりと蓋をしておいた。ひとまず大丈夫だな。

大丈夫じゃないのは三人の少女だ。

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「あのー。田中様は御在宅でしょうか？」

次の日の午後、日の出荘管理棟に現れたのは昨夜の三人。

居合わせたゆーみ、えりが応対に出て「「どうしてここに！」」と5人分のきれいにハモった声が聞こえた。

えりがどたばたと走ってきて「隣のクラスの子が来てるんですが何かあったんですか！」とすごい剣幕でまくしたてる。

「あーそれなんだが、夕べ…」

スマホに例の乱闘騒ぎの記事を表示させ、たまたま、本当に偶然立ち寄ったコンビニの近くで事件が起こり、三人を保護したいきさつを「若干の脚色」を踏まえて説明した。

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「今朝のニュースでやってたあの事件ですか！田中さん、けがとかしてないですよね？」

今度はゆーみが食ってかかってきた！脇腹とか執拗にまさぐってくる。

ゆーみのご乱心に目を丸くする三人。

ちなみに全員でリビングに移動、お茶を飲んでもらっている。

「居合わせただけで…三人がコンビニ近くで起きた乱闘騒ぎでおびえていてほっとけなくてなぁ」

こくこくと首を縦に振る三人。なるほどとうなずくゆーみとえり。

今朝のニュースではテンカイシステムによって捏造されたコンビニの防犯カメラに映った乱闘シーンも流れたらしい。俺見てないぞ。というか管理棟のテレビはデジタルチューナー無いから映らないし。ああ、スマホで見ればいいのか。

「そ、それで田中様にお礼をと思って警察の方から住所を…」

そういえば一応名前と住所、電話番号を聞かれたんだっけな。目撃者として何か追加の聴取が必要になったら呼びますね的な感じで。

個人情報もれまくりですね。テンカイが許可出したのかもしれないが女神さんからは一言もなかったな。

ちなみに今朝から姿をみせていない。あの現場の後始末だろう。

お礼の品は高そうなお店のお菓子詰め合わせだった。

保護者の方々は後日改めてくるらしい。

「ありがたく頂戴するよ。そういえば名前聞いてなかったな…」