「人が天使を殺したころ」2/2

人間たちを率いるリーダーがいた。

彼は、日ごろから神の命令に疑問を持っていた。だから彼は、羽の生えたその生き物の一人を前にして、剣を納めたのだ。その生き物は、彼の様子を見て、"言葉"を口にした。


「お前が持っている物はなんだ?」と。


人間のリーダーは、驚きつつも、剣で周囲の草を刈って見せた。それを見た生き物は、息を飲んだ。


人間の彼は、考えた。神はいったいどういう意味を、この殲滅に見出せというのかと。そうして、彼はその生き物を一体だけ、洞窟に隠した。



人間は、その生き物に名前を付け、そのように呼んだ。生き物は、すぐにその名前が、自分を指して言われるのだと理解し、人間の彼を観察し始めた。そこで二人の対話が始まる。


人間「私たちは、集団でいる。お前たちも、集団でいる。それは何故か?」

名前を与えられたもの(以下、α)

  「それは、そのようでいることが楽しいからだ」


人間「楽しい?必要、ではなくてか?」

α 「楽しいことが、必要なのだ」


人間「しかし、私たちは神の命令で、お前たちを殺すことになった。それは、楽しいことか」

α 「よくわからない。しかし、自分と同じような姿をしたものだけが、私の友だとは思わない」


人間「しかし神は、私たちとお前たちとが、異なる生き物だと言った」

α 「神とは何だ?私たちは、お前たちと異なるのか?」


人間「言葉が通じることには驚いたが、お前たちは神を知らないのか」

α 「なんだ?それは楽しいことなのか」


人間「神は私たちの創造主なのだ。神の言うことはすべて正しく、だからこそ、私たちは従っているのだ」

α 「そうか。それがお前たちが生きている、ということなのだな」


人間「お前たちは、いったい何なのだ」

α 「私たちは、〈楽しむもの〉と呼んでいる」


人間「それぞれに名前は無いのか」

α 「名前? あぁ、私を見るとき、お前が口にする言葉か。そうだな、私も不思議に思うが、お前は、言葉を作るのだな。私たちは誰かが言ったことを、言うだけだ。しかしその誰かも、誰かが言ったから、言っているのだ。私たちは、言葉を作ったりはしない」


人間「しかし、ではいったいどこから、言葉を学んだのだ?私たちと同じ言葉を」

α 「私はお前の発する言葉を聞いて、話しているのだ」


人間「しかしお前は、初めから、話をするのに不自由をしていないではないか」

α 「私たちは耳がいいのだ。それも特別にいいのだ。お前の身体からは、たくさんの言葉が生まれている。それはあまりにも多いが、私にはそれがわかるのだ」


彼はそのとき、神の言葉を聞いた。


神が、その生き物を殲滅させようとしている意味を知ったのだ。


そうして人間は剣を取り出し、αの首を落とした。人間は、αの羽を落とした時、自分の姿とあまりに似通っていることに疑問を持った。しかし、神は異なると言ったのだ。 


αの身体を持ち上げようとしたとき、そのあまりの軽さに驚いた。人間は、なんにしても、重さを重要なことだと思っていた。しかし、その生き物は大きさに見合わず、あまりに軽くて、何の価値もないように思えた。



こうして神は、巧妙に自らの足跡を隠したのです―。

                                  つづく。

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From Hair to Knee(仮題) ミーシャ @rus

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