大学時代を思い出す絶妙な空気感に脱帽!

うん、良かった。読んでから少し打ちのめされたような感じになって言葉が出てこなかったんだけど、
やっぱりいい作品だなあ、と思うのでレビューしてみる。
最初は長い比喩とかが多くて改行もあんまり無かったので読みずらそうかな、
とちょっと思ってたんだけど、読んでいるうちにどんどん物語の世界に引き込まれて、
気が付いたら20話6万文字、没頭して一気に読んでいた。
特に強く印象に残ったのは動物園での象の話の部分。あと日葵畑の中を歩くシーンもなんとなく好き。
この話にテーマと呼べるものがあるとしたら「モラトリアム」この一言に尽きるんだけど、
実はこのテーマってすごく抽象的で難しいと思う。それを作者は見事に描き切ってる。感情のわずかなぶれ、
心に刺さったちいさな棘みたいなもの、空虚感、そんなものがひしひしと迫ってくる。
「ひとりぼっちのソユーズ」はヒロインとの関係性がすごくよく描かれた美しい作品だけど、
この小説は友人たちとのかかわりもそうだけど主人公の内面についてかなり掘り下げられており、
より主人公の思考や考えが感じられて良い作品だと思う。
作者の方はこの作品を「実話じゃなくて創作だから」って言ったけれど
まるで本当にあった話のように生々しく感じられた。凄い。
この話をもっと多くの人に読んでもらいたい。そしてこの作品の素晴らしさを味わってほしい。

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