蒼空を舞う者
小倉 旭
プロローグ
ーーーこんな所で死ねるか…!死んでたまるか……!!
彼はふとよぎった家族の事を思い出すとそう思った。機体は穴だらけで燃料も後僅か、運が悪ければ味方の基地にたどり着くこともなく墜落してしまいそうな状態だ。だが彼は諦めなかった、愛する家族の為でもあるが基地にいる仲間達と再開する為でもある。
各種計測器を見てみると燃料は少ないが幸い高度は十二分にあるそれに残弾数も一斉射出来る位には残ってる。
ーーーこのまま何事もなく飛び続ければ間違いなく付近の味方の基地に辿りつけるはずだーーー
そんなことを考えながら操縦桿を動かしながら周りを警戒していると数キロ先を飛行してる航空機を発見した。
彼は舌を強く噛み眠気を覚ますやいなやすぐさまその航空機がどこの機体なのかを確認すべく目を凝らした。
よく見ると飛行していた航空機は1個分隊程の規模であった、さらに警戒しながらも接近するとその分隊の機体は全体的には斑模様の緑色だが主翼に黄色いラインの塗装、すなわち深緑迷彩が施されていた。
機種がわかるほど接近するとその分隊の機体はキ-43…… 一式戦闘機…即ち隼だということがわかった。
その隼の内一機が私の機体に並行に飛ぶとそのパイロットはこちらに手信号で
「誘導スル 我ニ続カレタシ」
と言ってきたので私も了承しそれに従い続いた。
ーーー長時間飛んでいると途中敵機に襲われてしまうのではないかと考えていたものだが実際は敵機には遭遇せず杞憂に終わって良かったと思ってる、後々先導してくれたパイロットが話してくれたが曰くこの辺りの制空権を握っているのだそうだ、戻る時までどんなに疲れていようとも気を抜けないパイロットにとって、制空権がこちらにあるという事は一介のパイロットにとってこれほど心強いものはない、まだ日本は連合国軍を圧倒してるということなのだと信じさせてくれるーーー
そのまま何事もなく無事飛行場に着陸して機から降りるやいなや整備兵や誘導してくれたパイロットがどっと押し寄せて来て「よく生きて帰ってきてくれた!」「諦めないでくれてありがとう!!」「よく頑張ってくれた!」等と賞賛された。私の機体を外から見ると穴だらけな上に片方の主翼のフラップがなくなっており尾翼も今にももげてしまいそうな惨状だった。
ほっと一息つくと今更なのだが生きてる実感が湧いてくる。
ーーー俺はまだ生きている、まだ生きてるんだ!ーーー
だが生きてるとわかった途端に疲れがどっと押し寄せてきた、忘れていたのだが私は何時間も飛んでいたのだから。
だがパイロットとしてやらなければならない事はやらないといけない、私は誘導してくれた隼のパイロットに彼の上官の部屋に案内され、その上官に報告を済ませた……
上官は私の報告を聞き終えるやいなや
「さぞ疲れているだろう臨時の部屋を与えるからそこで休むといい」
といいわざわざその部屋まで案内してくれた。
与えられた部屋でベットに横たわっていると、色々と考えることが出来る位余裕を取り戻していた。
上官やここの飛行場の人達の話を聞く限りではここは自分の所属している戦隊の基地の一つだが自分達の分隊…ましてや中隊がが使用している場所とはかなり違うと言うこと、この近辺の制空権は日本側が握っており近くに石油採掘拠点があるのも相まって燃料に余裕があり個々の技量も高く頻繁に訓練を兼ねて哨戒飛行を行っていること…… 。
落ち着いてくると心配ごとも増えてくる、空戦の中一人被弾して編隊から落伍した彼は小隊の皆がどうなったのか、自分とは違って本来帰るべき飛行場に無事帰還できたのか?一人はぐれた私のことを心配しているのではないか……等と戦友の事を心配したが考えても無駄だと思い目を瞑ると余程疲れが溜まっていたのであろう、そのまま意識が途切れたーーーーー。
蒼空を舞う者 小倉 旭 @ogura_asahi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。蒼空を舞う者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます