ハピネス・ワールド

玉露小路

第1話 脳マネジメント

200X年、脳マネジメントによって国民の潜在能力が発揮できるハピネス社会が実現した…。


ここは脳機能管理マネジメントセンター。成人した俺は、初めての潜在能力スーパー測定を受診していた。


『潜在能力344、Bランクです。』


人工知能セントラル・ガバメントの無機質な音声が、俺の測定結果を告げた。

この国では成人の潜在能力スーパー測定が推奨されている。この検査を受診することで超国民と認定される。超国民と認定されれば、本人の適性にあった職業が斡旋され、社会保障制度も優遇される。この国は先進的な脳機能管理マネジメントがもたらす最適化によって、国民の潜在能力が発揮できるハピネス社会が実現しているのだ。



先日、本年度成人の潜在能力スーパー測定が解禁されたとあって、脳機能管理マネジメントセンターには初測定らしき成人がざわめいていた。

結果を受けて盛り上がる成人の話し声は、聞きたくなくても耳に入ってきた。


「お前、結果どう?w」

「ギリギリCランク、やっべー」

「まじでwwwやばいなwwwww」

「笑いごとじゃねぇよ!人生かかってんだぞ、ったくよー」

「授業サボってガチャ回してっからだよwww」

「そういうお前はどーなんだよー」

「余裕でCなんだなこれがw」

「ふざけやがってちくしょー」


潜在能力スーパー測定では、国民の潜在能力スーパー人工知能セントラル・ガバメントによってスコア化され、この潜在能力スーパースコアによって超国民がランク付けされる。ランクによって、居住地区、職業、加入保険などが決定される。

つまり、成人が受ける初回の潜在能力スーパー測定は人生を左右すると言っても過言ではないのだ。少なくとも、4年後に受けることができる潜在能力スーパースコア更新まで、人生は半分決まったようなものだ。



潜在能力スーパーランクは大きく4段階に分けられる。


スコア100以下のDランク

スコア100以上200以下のCランク

スコア200以上400以下のBランク

そして、スコア400以上のAランク


俺の測定結果はBランク、よって職業は専門職が斡旋されることになるだろう。

さっきの成人たちはCランクと言っていた。Cランクは一般職だ。

ちなみにAランクは、高度な専門職。Dランクは単純職だ。



機能管理マネジメントがなかった時代には、職業選択が自由だったために、本人適性と職業選択の不一致も頻繁に起こっていたそうだ。晩期には職業の不適合が精神的負荷となり、自殺者も絶えなかったのだとか。潜在能力スーパーに適性が認められる職業のみ就業可能である今では考えられないことだ。


『Bランク以上の超国民は、専門能力ハイパー測定を受診してください。』


人工知能セントラル・ガバメントの無機質な音声が、次の検査への案内を告げた。

白いドアがゆっくりと開く。

さて、俺の専門能力ハイパーは、どんな色を示すのだろうか。

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ハピネス・ワールド 玉露小路 @gyokurok

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