文才の無い勇者など召喚したくなかったっ!!

momoyama

【入試問題】勇者の一人称のおかしい所を添削せよ

「ついにやったわ! 勇者様の召喚に成功した!」

 いったいなんなんだ

 俺は、さっきまで、高校にいたのに。

「始めまして、勇者様。私はこの国の姫であるアレイナと申します」

 女性が俺に自己紹介を話しかけてきたまるで童話の白雪姫のような見た目だ。

「俺は冥神 剣護。」

 俺は、自分の、自己紹介を、する。

「……えーと。それで、貴方は勇者として魔王を倒していただきたいのです」

 どうやら俺は別世界へ異世界転生してしまった

「分かりました、手を貸すぜ。」

 俺は黙って頷いた。

「……あの、すみません。ちょっとタイムで」

 アレイナが両手をTの字にする。

 そして近くにいた初老の老人に耳打ちを囁いた。



(……ちょっと大臣。どう思うかしら、あれ。どう考えても文章力が高いようには見えないんですけど)

(そうでしょうか? 受け答えは別に問題はないと思いますが)

(受け答え以前の問題よ。なんというか、文が危うい。句読点が全体的におかしいし、所々二重表現あるし、黙って頷いたって言いつつ黙ってないし。あと『召喚した』って言ったのに『異世界転生してしまった』って反応するのは、明らかに転生と召喚をごっちゃにしてておかしいし。そして、感情表現が足りなさすぎる。地の文は『いったいなんなんだ』以外は最低限の状況報告しか書けてないし、召喚された驚きも『いったいなんなんだ』しかないのは酷いと思う)

(我慢してくださいませ。文章力が低くとも、勇者なのは間違いありませんゆえ)

(いや、でも魔王は倒せないでしょ……。あの文章力じゃ倒す前に飽きて打ち切りになるのが限度でしょう……)

(い、いやいや。まだ分かりませんぞ! 一話だけで判断してはいけません!)

(いや、あれは絶対『先を考えず新しいサイトにちやほやされたい一心で小説投稿したけど、評価されないのでそのまま飽きていく』ってタイプよ。全体的に一行の文字量が少ない事と名前が無駄に中二な所から、その事が読み取れるわ。それに一話だけで判断するのは当然でしょ? だんだんつまらなくなるだけなら『この後最初みたいに面白くなるかも』って読み続ける人はいるだろうけど、一話が駄目だと以降がどんなに面白くてもそれを見られる前に『あ、これは駄目だ。ほかの作品を見に行こう』ってなるのよ。序盤が楽しめないようじゃ、この先やっていけないわ)

(ですが新しく勇者を召喚する余裕はこの国にはありません。あの勇者がこの国の最後の希望なのです)

(あんな希望、私はいやよ。私の事を『白雪姫』とか表現してんのよ? 他所の登場人物を引用しないと外見の説明ができないレベルで描写力が乏しいのよ? この先『激戦を戦い抜いたので傷だらけになった漆黒のフルフェイスアーマーを身にまとっているが、人間に殺された娘のくれた子供っぽい手作りアクセサリーを大事に身に着けている悲しみの幽霊騎士』みたいな、外見の特徴も重要なキャラが出てきても『××ってゲームの●●って敵キャラみたいだ』とだけ表現して台無しにするに決まってるわ。もしもこの世界の表現も『●●のラノベみたいな世界』だなんて表現されたら、私なら恥ずかしくて舌を噛み切るわねっ!)

(が、我慢してください! 『クッソつまらないパロディばかり言うから文章が全体的に幼稚』と言う欠点が出てないだけまだマシと考えましょう! それに文章力は無くとも、力は強力なので何とかなるはずです! 多分……)

(くそっ! もっと魔力があれば、現代作家の権威並の文章力を持った勇者も呼べただろうに! 悔しすぎるっ!)

(ま、まぁでも、文章力などどうでもよいではないですか。問題は戦う能力ですぞ)



 アレイナが、全然こちらに、来ないので、俺は、能力を、見る事にした。

「ステータス。」

 俺がそう呟くと、ステータス画面が表示された

 

==========

HP 9999

MP 9999


攻撃力 9999

防御力 9999

魔力  9999

素早さ 9999

魅力  9999

運   9999


能力:

全魔法LV9999 全特技LV9999 能力吸収 奴隷化 物質創造 召喚 テレポート

==========

 

 ふむ・・・まさにチートだな。俺TUEEEEEEEEEE!



(駄目だああああっ!! やっぱアイツ何も考えてねぇっ! ステータスが全部『9999』とか、脳が死んでるとしか思えないもんっ! これは打ち切り確定だあっ!!)

(か、カンストと言えば9999ですから……。よくある事ですから……)

(うっせーっ! よくある事だからダメなんだよっ! よくある事を意味なく使う作品は総じて駄作なんだよっ! せめて『なんかすごいから数字で表せない』ってパラメータにすれば笑えるけど、あれは何も笑い所が無い! 読者に見せる必要ないけどステータス見る下りを出したいがためだけに出した、意味も強みも無いステータスだ!)

(い、いやいやいや。能力的には強みしかないでしょう! 能力欄なんて、夢のオンパレードじゃないですか!)

(そうだねー! 俺ツエー小説読みふけってる中学生辺りには夢のような能力だねーっ! どれもどっかにありそうだねーっ! 最終的に『強すぎてカタルシスがないし文才のせいで爽快感もなくつまらないです。あとこの能力は●●って作品のパクリですか?』って言われてぶちぎれて、『もうこの作品の続きはやらない!』って感じに打ち切りになるんだろうねーっ! あーあ、この世界も短い生涯だったなぁ~~~~~っ!)

(だ、大丈夫です! ありがちな要素も、上手く調理できれば名作に変わるはずです……!)

(残念だがあいつに物語の調理などできるはず無いなっ! そもそも『●●すれば能力見れますよ』とも言ってないのに突然ステータスの呪文唱えるとか、いきなり流れが破綻しているだろうが!)

(まぁ、最近のWEB小説は異世界来たらすぐステータス画面見る傾向がありますからね。その流れに乗りたかったんでしょう……)

(それなら『もしかしたらそう言う小説で定番のステータスが見れるかも! 呪文を唱えたら出るのかな?』って心理描写あったらまだ許せた。そういう心理背景なしで突然『能力を見る事にした』って思考が浮かぶ高校生とか、変人すぎて感情移入出来ねぇだろ。しかもいままで心理描写なくて坦々としてたのに突然心の中で『俺TUEEEEEEEEEE!』とかハイテンションで叫ぶなんて、狂気しか感じねぇ。やっぱあいつだけは無理。私の肌に合わない!)

(な、なら物語をなるべく短くできるようにしましょう! 我らが彼を何のドラマも起こさずに魔王城の近くまで送れば、『冒険者編』みたいな無駄なストーリーを起こさずに済みますっ!)

(なるほど、物語の舞台を魔王城周辺に限定させるのか。確かに魔族しかいない場所なら無駄な仲間キャラも少なくて済むだろうし、だらだらとつまらない日常回作る余地も無くなるな! それで行こうっ!)


 アレイナが戻ってきた

「よろしいでしょうか、勇者様」

 アレイナが話しかける。

「おう、なんだアレイナ。」

 俺が返答する。

「魔王を倒してくださる許可も得ましたし、さっそく馬車に乗って魔王城に向かいましょう。あと敬語ぐらい使え、ぶん殴るぞ」

 アレイナが説明する

「いやー俺はテレポートがあるから別に良いぜ」

 俺は拒否する

「いえ、テレポートされたら寄り道されそうで怖いんです。なので魔王城が見える場所から監視させてください。あと敬語使えっつってんだぞ、マナーぐらい弁えろ」

 アレイナは頑なだ

「仕方ねーな。それで馬車で何日かかるんだ??」

 俺は質問する

「そうですね、大臣に説明してもらいましょう。あらかじめ言っておくが、魔王倒したらお前は速攻元の世界に帰れ。そして就活して『あんた、敬語が使えないとか教育がなってないな』って面接官から言われて絶望する人生歩みやがれ」

 アレイナが、そういうと、さっき、アレイナと、話していた、ハゲた初老の、老人が、こっちに、来た。

「失礼な地の文のせいで隠れていた殺意が湧き出しそうになりましたが、姫様に見苦しい姿を見せるわけにはいかないので今はスケジュールを説明します。魔王城までは通常の馬の馬車だと補給を含め10日かかる場所に位置しております。ですが今回は勇者様のために、馬の2倍の速さを誇るコソークという獣を用意します。これで大幅に時間が短縮されるでしょう。えーと、それを考慮に入れると必要な日数は……」

 大臣は紙にさらさらと何かを書いとる。

 だが俺には既に答えを答えられる状態となりさがった。

「5日だろ。」

 答えは10÷2。つまり5だ。

「は?」

 大臣はぽかんとした顔をしている。こんな早く答えを導き出す俺の能力に焦っているのだろう。

「やれやれ、そんな簡単な割り算もできない国だと魔王も倒せないじゃないのか。これは国から変えた方が良いかもしれない」

 どうやらこの国は算数が進んでないようでどうやら正しい日本語や算数や理科や社会をこの国に教えると魔王を早く倒せそうだ。

「よーし俺は国の王になるぜ」

 俺は決意を表明した。

「はい、タイム! 再度タイムっ!」

 アレイナが両手をTの字にする。

 そして大臣を引き連れ遠くへ離れる。

 どうやら俺の能力の力の有用性を大臣に説明したいようだ。



(あいつ完全に内政編始めようとしてるっ! しかも補給とか天候とか馬車との相性とかを考慮に入れず『馬の二倍の速さの獣を使うと着く時間は必ず二分の一になる』とか考えてる馬鹿な脳なのにっ! これはひどい展開しか思い浮かばない!!)

(そもそもあんな単純な割り算使えないと思うとか、我々はどんだけ単細胞な人間だと思われているんでしょうか……。そして簡単な割り算を能力と思ってる度胸もある意味すごいですね)

(教えようとしている内容も怖いわ。数学や化学と言わず算数や理科と言ってる点も怖いけど……何より日本語と社会を教えようとしてるのが怖いわ。あいつがこの国の社会を知ってるはずないし、この世界は日本語がないから教えても意味がまるでないのよ!? 馬鹿なの!?)

(そもそもその日本語自体怪しくて、絶対誰も教わりたがらないでしょうな。地の文と台詞を必ず交互に書いてるせいで会話テンポがクッソ悪いのもマイナスですな)

(とにかく、内政編なんて絶対手を出させちゃダメよ!? あんな参考資料読みふけらないと作れない高等な作品を書かせたら、絶対に途中で詰まるっ! 書けてもむちゃむちゃな改革おっぱじめて他の作品の子から『や~い。お前の世界、糞みたいな改革でも割とやれちゃうご都合主義世界~』って馬鹿にされるわ! 何としても止めなさいっ!)

(そんな子供っぽい罵倒する作品も、十分馬鹿だと思いますが……。とにかくわかりました、理由をつけて私が止めましょう)



 ハゲた大臣がこっちにくる

 どうやら話終わったようだ。

「ハゲ言うな、捥ぐぞ。……えーと、申し訳ございませんが現在の法律では召喚者が王になったり政治の口出しをする事は出来ません。なので魔王の討伐だけを考えてください」

 どうやら、ハゲは、俺の、天才さを、分かって、ないようだ。

「そんなの王を俺の能力の力で奴隷にすればいいだろ。」

 そう奴隷化を使えば万事解決だ。

 このハゲは何もわかっていない。

「貴様どうやら頭皮の罵倒によって死にたいようだな、後で地獄を見せてやる……。兎に角この世界の勉学をまったく知らない奴が国王操ったら、国が確実に破綻する。勇者と呼ばれたいなら絶対にやめろ。もしくは頭皮を私に奪われて死ねっ!」

 ハゲは殺し屋のような目つきで俺をにらんでいる。

「そんなの俺が勉学を勉強すればいいだろうな。」

 俺にそんな脅しは通じない。

 俺は普通に返答する。

「いや、この世界の勉学をするには学園に入るのが最低条件で……」

「じゃあその学園に入るぜ。」

 俺は学園への入学を決めた。

「ぐああああああっ!? 墓穴ったああああっ!!」

 大臣が叫んだ。

 そして遠くから見守っていたアレイナのそばに寄った。

 

 

(姫様、しくじりましたっ! あいつ、学園編までやる気ですぞ!?)

(あの勇者、文才ないのに学園編と内政編やるとか正気じゃねぇ! 絶対長くしなきゃ終わらねえだろ! そしてあいつには書ききれないだろ!)

(しかも姫様。学園は性質の悪い事に闘技場、ダンジョン、婚約破棄のしやすい食堂など、充実の設備が整っております……。そしてどれも目玉施設ですから、学内紹介の話に入ったら絶対出てきますぞ)

(駄目だ、充実しすぎてて書ききれないっ!! 絶対『学内紹介で出たこの施設は伏線だから全部使わないと……』って言うプレッシャーがかかって死ぬっ!! トーナメント編とダンジョン探索編と悪役令嬢編まで追加していったら、もはやあいつには手に負えないぞ!?)

(こうなったら処すしかないですね。秘密裏に処すれば国王にも『間違って死体が呼び出されました、失敗してごめんなさい』って説明が付きます。よし、処しましょう、処そう、処すぞっ!)

(大臣落ち着きなさい。さっきまで擁護派だったのに、頭皮の罵倒だけで殺すなんてなんか怖いわ)

(あの勇者は人をムカつかせる天才です……。これ以上のさばらせては、国の人々の心は穢れてしまいます!)

(それは否定できないわ……。くっ、こうなったら最後の手段を使うしかないわね)

(最後の手段?)

(そう、私達の目的はあくまで魔王を倒して世界を平和にすること。あの勇者に魔王を倒させるためなら、物語なんて必要ない!)

(ま、まさか! あの手を使うのですか!?)

(そうよ、それがこの世界が打ち切られずに平和になる唯一の方法。さぁ、やるわよっ!)

(あぁ、姫様……おいたわしい。あんなにヒロインになる事を夢見ていたのに、あの方法を使うしかないなんて……)


 アレイナがこっちにくる

 どうやら話終わったようだ。

「さっきの大臣に対する反応と全く同じね、ボキャ貧すぎる。……とにかく、貴方が学園に入る時間はありません。魔王は先日我々に世界を滅ぼす予告をしました。その予告時間が迫っているのです。それまでに魔王を倒さなければ……!」

 アレイナはそう言う。

「それなら仕方ないな・・・・それであと何日なんだ」

 俺は時間を聞いた。

 

「はい、この台詞を言い始めて5分で滅ぶそうです」

 ん?

「あぁ、これでは馬車では間に合いませんね。さっさと魔王城まで勝手にテレポートして勝手に戦って勝手に勝って勝手に帰ってくださいね!」

 だが待っ

「急いでください、この世界は一文字につき1秒時間が経っています。つまりこの台詞の前で空欄入れて100秒、この台詞込みで170秒経ってます」

「で、でもそんな設定まったく聞いてな」

「はい、また20秒使ったっ! そしてこの台詞で50秒使ったっ! もう余裕はないですよー、急いでっ!」

「え、えっと……」


 その後俺はなんやかんやあって魔王を倒した。そしてその後王国に戻り…ってああっ、文字数が足りな

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