ボタンを掛け違えた服のような世界。それが正しいのか、正しくないのか、何とも、もどかしい。日記を読み進めることで、少しずつ、読み手もこの街の住人へ変わっていく。
舞台はひどく幻想的な街。雨は空に向かって降るし、猫は喋るし、主人公はなんだか死神のような出で立ちをしている。その中で粛々とつづられる日記は、でも、とても日常的で…誰かが隣に引っ越してきたり、仕事に行ったり、一見何の変哲もないのだけれど、そこからは確固たるその街の暮らしの風景が浮かび上がってくる。静かで穏やかで、こんな暮らしに憧れる。この作品と出会えてよかった、そう思います。