(電話編)
この
校内の下駄箱置き場に着いた自分たちは、正面玄関に脱ぎ捨てられた下靴を見つけた。それは、蒼姫さんの"モノ"だった。どうやら、蒼姫さんは、下靴に履き替えらずに靴下のまま、新校舎内に入って行ったようだ。正面玄関のあるB棟から渡り廊下を経由して、探偵部の部室があるA棟に入る。4階に
「何を観ているんですか?」
自分が問いかけると、蒼姫さんは即答した。
「これは、"4年前"の志名川高校卒業アルバム。」
「その卒業アルバムに何があるんですか?」
「私、気づいたの。この4年前の卒業アルバムに"ある二人"が写っていたことに」
「"ある二人"って‥まさか!」
「その、まさかよ。小早川君」
卒業アルバムの個人写真ページを捲り続けた蒼姫さんが手を止めた。
「あった!これよ。」
蒼姫さんが指を差した組別ページの先には…。
『大梅先輩と富林先輩!!』
白菊さんと近森刑事が遅れて引き連れてきた土野植警部一同も声を上げた。そこには、ハッキリと大梅先輩と富林先輩が写っていた。土野植警部が教頭先生を問い詰める。
「これは、どういう事ですかね?教頭先生」
「……」
しかし、教頭先生は口をつぐみ、答えるのを
「あくまでも私の推測ですが、もしかすると、大梅甲斐先輩や富林元彦先輩は何かしらの原因で、高校卒業
「それは、本当ですか?教頭先生!」
土野植警部の語気に
「ですが、この事件との因果関係があるとは…。ちょっと、君たち待ちなさい!」
教頭先生が重い口を開いて言いかけた途端、今度は白菊さんが無言のまま、その"卒業アルバム"を持ち出して、部室を
「少々、お待ち下さい。それでは、失礼します。」
そう言うと、蒼姫さんも部室を後にした。自分も警部ご一行に会釈をして、蒼姫さんについて行く。
「どこへ行くんですか?」
「答え合わせをしに行くの。
「
「
白菊さんを追って階段を下り、
「身近な人物、身近な人物、身近な人物、身近な人物、身近な人物、身近な‥身近な人物!」
「もう、お分かりね。"前"探偵部長の先輩。」
自分達が1階に着く頃には、白菊さんが遺体発見現場付近にあるピンク色の公衆電話で電話を掛けようとしていた。未だ現場には、愛知県警とマークされた黄色い規制線が張られている。電話の受話器を取って、ギザ十(円)を入れる。あとは、連絡先の電話番号に沿って、ダイヤルを一桁ずつ右に回すだけだ。
白菊さんは、受話器を片手に電話台の上で、例の卒業アルバムを開き、パラパラと後ろ方のページを捲り始めた。確か、卒業アルバムの後ろ側は、タウンページのように各卒業生徒の電話帳となっている。ズラリと並んだ名前と電話番号の
ちなみに
「小早川
ようやく白菊さんが、お兄さんの電話番号を見つけたようだ。それには、自分も少し
『052-221-XXX』
白菊さんは、電話番号の数字を口ずさみながら、一文字ずつダイヤルに指先を掛けた。人差し指で掛けたダイヤルは、
「これで、OK!」
そう言うと、白菊さんは受話器を耳に当てた。
「出ないかなー。」
まるで白菊さんが、彼氏に電話をする彼女かのように
「繋がらないなー。」
「華絵。ちょっと、代わって」
「いいよ」
なかなか繋がらないため、今度は蒼姫さんが電話番になる。
『トゥルルルル…もしもし、こちら情報屋"コバヤカワ"です。』
「ご
『ひょっとして、この声は蒼姫君かい?』
「そうです。こんばんは」
『こんばんは、蒼姫君から電話が来るなんて
「お忙しい所、すいません」
『いやいや、こちらこそ。電話が繋がらなくて、すまない。今、電話が立て込んでいて。』
「それで実は、ご相談がありまして。しかも、早急な…」
『その物言いは、何か大変な出来事が起きたような言い草だね。』
「お
『
「ええ。それで、卒業生である小早川輝さんに"お
『それは、何だい?』
「"4年前"の志名川高校で一体、何があったのか?教えて頂きたいのです」
『なぜ、4年前の出来事を知りたい?』
「その4年前の出来事が今回の事件に関係している可能性があるからです」
『それは、本当か?』
「事件との接点があることには、変わりありません」
『そうか…分かった。では約4年前の志名川高校内で一体、何があったのか教えよう。
「よろしく、お願いします。」
『あれは4年前の志名川高校3年生2学期終盤、冬休み直前の出来事だった。自らの進路も決まり、あとは高校を卒業して、大学受験組や企業就職組が
「"オノデラ事件"?」
『ああ…当時の生徒会で会長を
「今は亡き??」
『それが休学直後の冬休みに自殺をしてしまってだな。』
「自殺…原因は?」
『冬休み直前に同級生である3年生のある二人が放課後の校内で、"
「その女子生徒って、まさか!」
『そうだよ。オノデラ ユウコだ』
「そうなれば、同級生の二人は、大梅甲斐さんと富林元彦さんですね」
『ああ、そうだ。って、いつの間にその名前を…まさか!』
「実は、今回の事件の被害者が、"大梅甲斐さんと富林元彦さん"なのです。」
『なんだと…それで。』
「それと、もう一つ、お尋ねしたいことが…」
『それは、何だい?』
「その亡くなったオノデラ ユウコさんに"兄弟"はいましたか?」
『兄弟?…多分、いたよ。"4歳"年の離れた弟が…名前は確か、オノデラ ユウトだったけかな。』
「それは、本当ですか?」
『本当だよ。今は、"
「そうですか…。貴重な情報ありがとう御座いました」
『こちらこそ、どうも。それと、今回の情報料は、事件解決の手掛かりとしての
「いいんですか?」
『いいんだよ、母校に関係する事件だし。』
「本当にありがとう御座いました」
『あと、そこにいるであろう
蒼姫さんと親戚のお兄さんの電話は、蒼姫さんの断片的な会話で大体の内容を
「輝さんが、小早川君によろしく伝えといてくれ。と言っていたわよ」
「ありがとう、蒼姫さん。それで、事件の行方は…。」
「これで、"
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