第3話 お父さん
斉藤がいなくなってから5日後の夜の事だ。
「もしもし、久保くん。」
悲しげな声で電話をかけてきたのは中谷だった。
「どうしたんだ、中谷。」
「お父さんが...お父さんが...」
「お父さんがどうしたんだ?」
「お父さんがいなくなったの。」
「どういうことだ?」
詳しく事情を聞いてみると、一昨日の晩からお父さんが帰って来なかったそうだ。その時はお父さんは徹夜して、向こうで寝泊まりしてるのかもとお母さんと話していたそうだが、昨日の昼前に職場からお父さんが来てないと電話を受けて事実を知ったらしい。
「要するに、お父さんが行方不明ってことか?」
「そういうこと。斉藤くんといい、お父さんといい、どうしてこんなに多く行方不明になるの。」
「俺にもわからな...あっ、まさか。」
「なにか分かったの?」
「確実とはいえないけど、あのサイトが問題あるんじゃないのか?」
「あのサイトって、エラーの出た?」
「ああ、思い出してみろ。宮田を検索しても変化はなかったが、斉藤の時はエラーが起きた。あのエラーはそのサイトが存在しない時のエラーだ。それがもしかすると、その人物も存在しない、つまり行方不明になってるのではないんじゃないのか?」
「だとしたら、だよ。私のお父さんはどうして?」
「もし、それと関係しているのなら、お父さんの名前を誰かが検索して、エラーが出たんだと思う。」
「誰かって誰なの?」
「それがわかったら苦労しないよ。でも、そのサイトの存在や内容を知っている人物だとは思うんだ。」
それから、何日間もテレビやインターネットでは、行方不明多発のニュースがされていた。誰かの陰謀や、集団による犯行なのではと騒がれていた。しかし、あのサイトについては誰も触れてはいない。そもそも、そのようなサイトとの関連性があるかどうかも分からないので、当然なのであろう。しかし、僕達はあのサイトの巨大な力を知らない。刻一刻とその力を見せつけられる時は近づいていたのに。
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